1998 Fiscal Year Annual Research Report
単核糸状菌イネいもち病菌の細胞情報伝達と感染特異器官分化機構に関る遺伝子群の探索
Project/Area Number |
10660320
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鎌倉 高志 理化学研究所, 微生物制御研究室, 先任研究員 (70177559)
|
Keywords | Magnaporthe grisea / Pyricularia oryzae / イネいもち病菌 / 植物病原糸状菌 / 分子生物学 / cDNAサブトラクション法 / 付着器 / 分化誘導 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多くの植物病原菌の持つ感染特異的器官である付着器の形成機構を中心に植物病原性という特殊に進化した能力を分子レベルで解明することにある。付着器は、生植物に感染する能力を持った植物病原菌が、植物自体の持つ物理的防御機構を突破するために必要とされ、感染時に特異的に分化するが、その分化誘導機構、形態形成機構の解明には植物病害制御技術への貢献に加えて、糸状菌をモデル生物とした分化生物学的な興味が持たれる。 本研究では、分化形態形成時に特異的に発現する遺伝子群をディファレンシャルサブトラクション法を用いて取得し、付着器形成時特異的に発現する遺伝子と思われるクローンを含むディファレンシャルcDNAライブラリーを構築した。そのうちの細胞分化に寄与しうると考えられる塩基配列を持ったクローンをはじめ、いくつかのクローンについて、解析を進め、新たに構築したいもち病菌染色体コスミドライブラリーから、染色体遺伝子をクローンし、遺伝子構造を明らかにした。さらにそれらの遺伝子の機能を推定するため、いもち病菌で前例のある二回相同組み替え法による遺伝子破壊を行った。すでに得られた一つの遺伝子破壊株では付着器の分化誘導に著しい変異が見られた。付着器形成を誘導する外的因子として胞子発芽管が接着した固体基質の硬度や疎水性という物理的因子と植物表面成分に含まれる化学的因子がある。本遺伝子破壊株は樹脂などの人工基質上での付着器形成能を失っているが、植物上、あるいは化学的因子による分化誘導は野生株と同等であったことから、付着器の形態分化に関わる遺伝子群はすべて完全であり、引きがねとなる物理的因子の認識が欠損、あるいは著しく低下しているのではないかと推定された。この遺伝子の全体的な構造はいかなる既知遺伝子とも相同性を持っておらず、その機能には興味が持たれる。
|
Research Products
(2 results)