1999 Fiscal Year Annual Research Report
単核糸状菌イネいもち病菌の細胞情報伝達と感染特異器官分化機構に関る遺伝子群の探索
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10660320
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Research Institution | RIKEN Institute |
Principal Investigator |
鎌倉 高志 理化学研究所, 微生物制御研究室, 先任研究員 (70177559)
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Keywords | 植物病原菌 / 付着器 / ディファレンシャルクローニング / Magnaporthe grisea / Pyricularia oryzae / キチン結合ドメイン / 分化誘導 / 固体表面認識 |
Research Abstract |
イネいもち病菌の付着器形成誘導には、外界因子をトリガーとしたde novoの遺伝子発現が必須であることから、cDNAサブトラクションにより感染初期過程に発現する遺伝子群のディファレンシャルcDNAライブラリーを得た。さらに完全長cDNAライブラリーおよびコスミドライブラリーによる染色体遺伝子構造解析系の確立、感染初期過程のいもち病菌体の遺伝子発現解析系の効率化等によりライブラリーの解析を行った。 これまでに独立した約160クローンの両端塩基配列の解析が終了した。興味のもたれる遺伝子の機能解析のため、遺伝子破壊を行ったところいもち病菌の付着器形成誘導に重要な役割を持つと示唆される遺伝子が見いだされた。 それらのイネいもち病菌の付着器形成に重要な役割を持つと推定される遺伝子群から付着器形成時に極めて特異的に発現するクローンA4について、その遺伝子破壊体のさらに詳細な形質解析および遺伝子の構造解析を行った。A4遺伝子破壊株は、各種の固体人工基質上での付着器形成誘導能をほとんど失っていたが、植物体上では親株とほぽ同様の付着器形成能を有し、病原性も保持していた。このことからA4遺伝子破壊株は固体基質表面の物理的因子に対する認識能が著しく低下しているが、その他の付着器誘導トリガーである化学物質に対する応答能は保存きれていると推定された。本遺伝子は全体としては既知の遺伝子と相同性を持たなかったが、局所的に植物のキチナーゼに特異的にみられるキチン結合ドメインと思われる相同部位を2つ持ち、C末端付近に異常なセリン・スレオニンクラスターを持つ特異な構造を有する分泌タンパクをコードするものと推定された。これらの特徴的なドメインを部位特異的変異法により改変したところ、いずれも遺伝子の機能を失った。キチン結合ドメインは、これまで糸状菌のキチン関連タンパクからは見つかっていない、植物に特徴的なものであり、その由来に興味が持たれた。
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[Publications] T.Kamakura: "cDNA subtractive cloning of genes expressed during early stage of appressorium formation by Magnaporthe grisea"Biosci.Biotech, Biochem.. 63. 1407-1413 (1999)
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[Publications] 斎藤憲一郎: "イネいもち病菌の付着器形成に関与する遺伝子の構造解析と機能推定(1)"日本植物病理学会報. 65. 342-342 (1999)