1999 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウム情報伝達系に関与する扁平上皮細胞特異的分化誘導・増殖制御因子の同定
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10670009
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Research Institution | NIIGATA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
人見 次郎 新潟大学, 医学部, 助教授 (00218728)
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Keywords | 扁平上皮細胞 / カルシウム情報伝達 / カルシウム結合蛋白 / モノクローナル抗体 / 基底細胞 / 細胞分化 / 細胞増殖 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
[目的]扁平上皮細胞は表皮細胞と同じく、単層培養下では細胞外カルシウム濃度に依存して分化し、増殖を停止する。このような扁平上皮細胞が示すカルシウム感受性の担体分子候補を検索する目的で、 1.扁平上皮細胞特異的カルシウム結合蛋白CAAF1の相互作用分子の検索。 2.Differential Display(DD)法による扁平上皮分化誘導・増殖制御因子の検索・同定。 3.細胞外カルシウム低濃度で細胞死する食堂扁平上皮がん細胞をターゲットに細胞増殖抑制能を有するモノクローナル抗体作製。 を行った。 [結果・考案] 1.申請者のこれまでの研究により、申請者が発見したカルシウム結合蛋白CAAF1(S100A12)が扁平上皮細胞の増殖・分化に関与しているカルシウムセンサーである可能性が示唆される(Arch.Histol.Cytol.61,163-178,1998;J.Cell Sci.109,805-815)。そこで、CAAF1をカルシウム感受性の担体分子候補の一つと考え、その機能解析のためTwo-hybrid systemを用いてCAAF1結合分子を検索した。Bait VectorとしてpHybLexA-CAAF1を作製し、酵母内で発現を試みたが、ターゲット分子をクローニングできなかった。強制発現により、CAAF1がヒト食道がん細胞の増殖を抑制することを確認しており(Arch.Histol.Cytol.61,163-178,1998)、酵母においてもCAAF1が増殖を負に制御する可能性は否定できない。また、CAAF1のリコンビナント蛋白を用いてターゲット分子を検索したが、自己多量体形成がカルシウム濃度依存性に認められた。多量体形成能と機能発現との関係を、現在解析中である。 2.正常扁平上皮細胞のカルシウム感受性は、多くの場合、がん化によって喪失する。そこで正常食道上皮細胞と食堂上皮がん細胞で、それぞれ特異的に発現する遺伝子をDD法により同定し、カルシウム感受性の担体分子候補を検索した。その中で、上皮基底細胞が、カルシウム結合蛋白S100Pを細胞外カルシウム濃度依存性に発現することをin vitroで確認した。また、in vivoでは基底細胞層直上の第二層以上の細胞群が免疫組織学的に陽性であった。現在、基底細胞へのS100P遺伝子の強制発現によりS100P分子の機能を解析している。 3.食道扁平上皮がん細胞をターゲットに細胞増殖抑制能を有するモノクローナル抗体作製を試み、新しいモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの樹立に成功した。抗原の性状について解析中であるが、正常基底細胞での発現を認め、細胞外カルシウム濃度依存的に細胞内から細胞膜に転移することが確かめられた。
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