1998 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の形態形成におけるマトリックス分解酵素の発現とプログラム細胞死に関する研究
Project/Area Number |
10670015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
滝川 俊也 京都大学, 医学研究科, 助手 (90263095)
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Keywords | 哺乳類 / 形態形成 / プログラム細胞死 / マトリツクスメタロプロテナーゼ / 口蓋 / 肢芽 / 器官培養 |
Research Abstract |
本年度の研究は、口蓋突起の癒合や肢芽の指の分離をモデルとして、胎生期の形態形成過程では、マトリックスメタロプロテナーゼの発現と活性化による細胞外マトリックスの分解が一次的現象であり、いわゆるプログラム細胞死は形態変化をもたらすために起こる現象ではなく、細胞外マトリックスの分解により接着依存性細胞の一部が基質との接着を失うことによって生じる偶発的な死にすぎないという、報告者らの仮説を器官培養系を用いて検証することを目的とした。 しかし、これまでに報告されてきた口蓋と肢芽の培養系では、コントロール群でもプログラム細胞死が起こる部位以外のさまざまな場所で無秩序にアポトーシスが起こっており、報告者らの目的とする実験には適さないことが、アポトーシス細胞に生じるDNA切断を指標とするTUNEL法の組織染色により判明した。 そのため、報告者らは、器官培養系に改良を重ねて、Vivoで起こるプログラム細胞死と形態形成をvitro現可能な、口蓋と肢芽の培養系の開発に成功した(肢芽の器官培養系はNHKと共同でビデオ撮影にも成功し、本年5月以降に放送予定の科学スペシャル番組の中で放送される)。 報告者らは、まず、口蓋の培養系で、caspaseに対する合成ベプチドのインヒビターを用いて、口蓋突起癒合部の上皮に起こるプログラム細胞死を抑制した。 その結果、プログラム細胞死が起こらなくても癒合(左右の口蓋突起の間葉の合流)が成立し、癒合部上皮の消失にプログラム細胞死が必要ではないことを証明した(投稿準備中)。 続いて、マトリックスメタロプロテナーゼの抑制実験を行ったところ、癒合部上皮は消失するが、上皮下の基底膜のみが残存して間葉の合流は起こらないことがIV型コラーゲンの免疫染色により判明した。 現在、TUNEL法の染色により、プログラム細胞死が抑制されているか解析中である。
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