1999 Fiscal Year Annual Research Report
第三脳室腹側前部のADH分泌制御機構におけるフリーラジカルの役割の解明
Project/Area Number |
10670059
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山口 賢一 新潟大学, 医学部, 助手 (50108023)
|
Keywords | 第三脳室腹側前部 / 対角帯垂直肢核 / 抗利尿ホルモン / 心臓血管作用 / 一酸化窒素(NO) / L-arginine / Sodium Nitroprusside / NG-nitro-L-arginine(L-NAME) |
Research Abstract |
第三脳室前腹側部(AV3V)のADH分泌制御機構は、水分調節系(神経内分泌系)、心血管系、免疫・体温調節系の3者を統御する重要な調節機構である。それにも拘らず、この機構を活性化するしくみは未だ良く分かっていない。本研究の目的は、申請者の過去の研究によって解明されたこの機構の活性化因子、プロスタグランジン(PG)E2と密接な機能的連関をもつフリーラジカルが、AV3VのADH分泌、心血管制御機構に対し、どのような役割をもつのかを解明することである。 研究は本年度の交付申請書に記載した通りに行い、次の結果を得た。 (1)昨年度の研究はLアルギニンのAV3V投与がADH分泌と昇圧、頻脈反応をもたらすことを明らかにしたが、L-Arginineと違って自発的にNOを発生する物質であるSodium Nitroprusside(SNP)を当該領域に局所注入しても、投与量に依存したADH放出反応が惹起された。しかし、SNPによる心血管反応は、L-Arginineによるものと比べて微弱だった。SNPと同様にNOを自然発生する(±)-S-Nitroso-N-Acetylpenicillamine(SNAP)は、生理的食塩水への溶解性が低く、試した濃度ではADH分泌や心血管因子に有意な効果を与えなかった。 (2)AV3Vの近接領域である対角帯垂直肢核(nucleus of the vertical limb of the diagonal band)にL-Arginineやその立体異性体であるD-arginineを局所投与しても、ADH分泌や心血管因子は変動しなかった。一方、脳室内投与では、L-Arginineは、AV3V投与と同様に、動脈圧を上げADH分泌を高めたが、頻脈作用は起こさなかった。SNPの脳室内投与では、ADH分泌も心血管因子も有意な変化を示さなかった。 (3)L-ArginineをAV3Vに注入することで惹起されるADH分泌の亢進、昇圧ならびに頻脈反応は、NO合成酵素の阻害薬であるNω-nitro-L-arginine methyl ester(L-NAME)を15分前にAV3Vに前投与すると発現しなかった。L-NAMEだけをAV3Vに与えた場合には、動脈圧と心拍数の基礎レベルが、僅かだが有意に増大した。しかし、ADHの分泌には影響しなかった。 以上の結果は、AV3Vで産生されるNOが当該領域のADH分泌ならびに心血管制御機構を活性化すると言う申請者の見解を一層強めるものである。NO合成酵素は対角帯垂直肢核にも存在するが、この領域で生じるNOは、ADH分泌や心血管調節に殆ど寄与しないと考えられる。
|
-
[Publications] 山口賢一: "ADH分泌と心血管系に及ぼす第三脳室前腹側部のNO作用の検討"日本内分泌学会雑誌. 75(1). 105 (1999)
-
[Publications] Yamaguchi Ken'ichi: "Negligible role of catecholaminergic receptors in the anteroventral third ventricular region in mediating vasopressin-releasing and cardiovascular actions of prostaglandin E2"Experimental Brain Research. 129(4). 532-540 (1999)
-
[Publications] Yamaguchi Ken'ichi: "A search for functional correlations between nitric oxide and prostaglandin in the AV3V mechanism regulating ADH secretion and the cardiovascular system"Japanese J. Physiology. 49(印刷中). (1999)
-
[Publications] Yamaguchi Ken'ichi: "Activation of gastric afferents increases noradrenaline release in the paraventricular nucleus and plasma oxytocin level"J. Autonomic Nervous System. (印刷中).
-
[Publications] 山口賢一: "第三脳室前腹側部(AV3V)、対角帯(VDB)、その他の脳領域における一酸化窒素(NO)作用の検証:バゾプレッシン(VP)分泌と心血管作用について"日本内分泌学会雑誌. 76(印刷中).
-
[Publications] 山口賢一: "Cardiovascular action and ADH secretion caused by nitric oxide formed in the AV3V"Japanese J. Physiology. (印刷中).
-
[Publications] Yamaguchi Ken'ichi: "Control Mechanisms of Stress and Emotion: Neuroendocrine-Based Studies,Excerpta Medica International Congress Series No. 1185"Elsevier Science B.V.,Amsterdam. 4 (1999)
-
[Publications] 山口賢一: "新生理科学大系 第17巻 呼吸の生理学:高圧、Underwater Physiology と呼吸機能"医学書院(東京)(印刷中).