1998 Fiscal Year Annual Research Report
培養視交叉上核電気活動リズムに対する時計遺伝子の役割
Project/Area Number |
10670064
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
井上 愼一 山口大学, 理学部, 教授 (10274151)
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Keywords | サーカディアンリズム / 生物時計 / 時計遺伝子 / 視交叉上核 |
Research Abstract |
生物が示すサーカディアンリズムの中枢は視床下部視交叉上核に存在することが確立されている.最近の急速な進歩はその分子,遺伝子レベルのメカニズムを明らかにしつつある.この課題では,去年クローニングされた時計遺伝子の一つと目されるPer遺伝子の機能を明らかにする目的で研究を進めている. 初年度の今年はPer遺伝子のラットにおけるホモローグrPerを神戸大学岡村研究室の協力でクローニングし,そのアンチセンスオリゴ核酸を合成した.これをラットの視交叉上核に作用させたときの行動を記録するシステムを作成した.ラットを麻酔して,2μlのアンチセンスオリゴ核酸を投与するためのカニューレを慢性的に植え込んだ.その後,ラットを恒暗条件に移して,リズムを自由継続させ,一日の様々な時刻にrPerlアンチセンスオリゴ核酸を2nmol視交叉上核に微量注入した.その結果,rPerlアンチセンスの投与だけでは位相変化を引き起こさないことが観察された.次に恒暗条件におかれたラットに光を照射すると自由継続している行動リズムの位相が変化する.これに対するrPerlアンチセンスオリゴ核酸の影響を光を照射する時間より前に投与して,位相変位がブロックされるかどうかを見て,検討した.その結果,光照射より1時間,4時間前のrPerlアンチセンスオリゴ核酸の投与は位相変位をブロックできなかったが,6時間前に投与すると統計的に優位な位相変位量の減少が観察された.その大きさは約半分にまで小さくなった. この結果は,c-fosとjun-Bのアンチセンスオリゴ核酸を投与して位相変位を観察したWollnikに結果とも一致している.また,ラットにおいてはPer遺伝子が3つもあって,その一つしかブロックしていないことを考慮すれば,光に対する生物時計の応答が部分的に,すなわち50%だけ阻害されたことが解釈できる.
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[Publications] K.Shinohara: "Luminance-dependent decrease in vasoactive intestinal polypepide in the suprachiasmatic nucleus" Neuroscience Letters. 251. 21-24 (1998)
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[Publications] K.Shinohara: "Phase dependent response of vasoactive intestinal nucleus polypeptido to light and darkness in the suprachiasmatic" Neuroscience Research. (in Press). (1999)
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[Publications] 井上愼一: "体内時計の分子機構" Annual Review内分泌、代謝1999. 70-77 (1999)