1998 Fiscal Year Annual Research Report
腎障害発症過程におけるアポトーシスとシトクロムP450が生成する活性酸素の関与
Project/Area Number |
10670094
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
今岡 進 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (60145795)
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Keywords | シトクロムP450 / 活性酸素 / 腎臓 / 血管 / アポトーシス |
Research Abstract |
腎障害や血管障害の発生に、活性酸素やフリーラジカルが関与していることが明らかにされている。さらに、これらの活性物質は主として酸化酵素によって生成される。従って、細胞障害が起こっている組織では、酸化酵素が何らかの原因で活性化されたり誘導されたりしている可能性がある。本研究では酸化酵素の一つであるシトクロムP450(P450)が生成する活性酸素が細胞にどのような影響を与えるかを検討した。まず、モデルとして最も多くの種類のP450が存在することが明らかになっているラット肝臓で検討した。肝臓から精製した10種類のP450を用いて電子スピン共鳴(ESR)で、活性酸索を最も多く生成する分子種がCYP1A2,2B1,3A2であることを明らかにした。これらのうち、肝臓ではCYP1A2およびCYP2B1の含量は極めて少ないが、CYP3A2は多いこと。そして、ラットにフェノバルビタール(PB)を投与すると、CYP2B1は数百倍、CYP3A2は数倍誘導されることが明らかにされている。ラットにPBを投与すると、CYP2B1,3A2の増加にともなって、酸化ストレスのマーカーである8-OHdGの増加が見られた。組織染色によって、CYP2Blの誘導部位と8-OHdGの生成部位によい相関が見られた。また、何種類かのオンコジーンの変化を検討した結果、c-mycの顕著な誘導が見られた。このことは、PB投与によって肝細胞のアポトーシスが起こっている可能性を示唆している。さらに、8-OHdGの増加、c-mycの誘導は、P450の阻害剤であるケトコナゾールを投与すると、完全にコントロールレベルに低下した。これらの結果は、P450が生成した活性酸素が、遺伝子DNAの酸化やアポトーシスを引き起こす可能性があることを示している。一方、血管障害についてラットの胸部大動脈について検討したところ、CYP2B1およびP450への電子伝達酵素であるNADPH-P450還元酵素の存在が明らかになり、血管障害とこれらの酵素系との関連を検討中である。
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[Publications] M.Nakamura,S.Imaoka et al.: "P450 isoforms in a murine macrophagl cell line,RAW 264-7,and changes in the levels of P450 isoforms by activation with LPS and INF-α" Biochem.Biophys.Acta. 1385. 101-106 (1998)
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[Publications] Y.Shimamoto et al.: "Differential alterations in levels of microsomal cytachrome P450 isozymes following intracerebroventricular injection of bacterial LPS in rats." Arch.Toxicol.72. 492-498 (1998)
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[Publications] S.Takemura,Y.Minamiyama S.ImAOKA et al.: "Nitric oxide modulates functions of hepatic cytochrome P450 in endotoxemic rats." J.Hepatol.印刷中. (1999)