2000 Fiscal Year Annual Research Report
新しく見出された血漿過酸化脂質還元酵素の単離・同定とその臨床的役割の解明
Project/Area Number |
10670146
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
吉村 眞一 東海大学, 医学部, 講師 (30230808)
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Keywords | 過酸化脂質 / 過酸化脂質還元活性 / アポリポプロテインB100 / アポリポプロテインA1 / 妊娠中毒症 / 糖尿病 / 腎不全 |
Research Abstract |
血漿過酸化脂質は血管内皮細胞を傷害することから、アテローム性動脈硬化症などの原因の一つと考えられている。我々はヒト血漿には血漿グルタチオン・ペルオキサダーゼ以外にも過酸化脂質を代謝する新しい酵素が存在することを証明して来た。本研究では(1)この酵素の本体を解明すること、(2)妊娠中毒症やアツハイマー病などにおけるこの酵素の臨床的役割を解明することを目的とした。昨年度までの研究では、主にその本体の解明および反応機構について検討を行ってきた。その結果、この活性の臨床的な役割を解明するためには、個々の活性蛋白を測定するのではなく総体としての活性を測定する必要性が認識された。そこで本年度は血漿過酸化脂質(PLPC-OOH)還元活性の正確な定量系の開発を試み、この開発された測定法を用いて、過酸化脂質がその病態に関与していると疑われているいくつかの疾患について測定した。 東海大学付属病院を受診した患者の中で、インフォームド・コンセントのもとに同意の得られた患者121名より血液を採取した。その内訳は妊娠中毒症11例、正常妊娠者52名、男性不妊症患者18名、腎不全患者24名、糖尿病患者34名であった。得られた血液より血漿を分離し、血漿過酸化脂質還元活性の他に血漿過酸化脂質量、血漿グルタチオン・ペルオキシダーゼ活性などを測定し、各種の臨床マーカーと比較・検討した。その結果、妊娠中毒症患者ではこのPLPC-OOH還元活性が約10%程度低下していることを見出した。妊娠中毒症患者での血漿過酸化脂質量が増加する原因は未だ不明であり、今回我々の測定したPLPC-OOH還元活性がその原因の一部である可能性が示された。しかしながらこの低下は統計的には有意でなく今後より症例を増やしていく必要性が考えられた。また、腎不全、糖尿病患者ではPLPC-OOH還元活性が正常者の約1.5倍にまで上昇していることが観察された。この原因については不明であるが血漿過酸化脂質の上昇への応答反応であると考えられる。これらのことから、PLPC-OOH還元活性が多くの疾患の病態に強く関与している可能性が示され、今後より一層の詳細な検討が必要と考えられた。
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