1999 Fiscal Year Annual Research Report
福岡県久山町剖検例における冠状動脈硬化の病理疫学的研究
Project/Area Number |
10670164
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中島 豊 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50135349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 裕 九州大学, 大学院・医学系研究科病態機能内科学, 講師 (80161602)
居石 克夫 九州大学, 大学院・医学系研究科病理病態学, 教授 (70108710)
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Keywords | 動脈硬化 / 疫学調査 / 危険因子 / 高脂血症 / 肥満 / 高血圧 / 冠状動脈 / 久山町 |
Research Abstract |
近年、日本においてはライフスタイルの欧米化や高齢化社会に伴い虚血性心疾患の占める位置は大きくなりつつある。しかし虚血性心疾患の疫学的調査に比して、その主たる原因である冠状動脈硬化そのものに対する疫学的研究は少ない。そのため本研究では地域一般住民の冠状動脈硬化度を病理学的に評価し、その危険因子に関する解析を行った。 【方法】福岡県久山町住民で1988年に一斉検診を受診し、かつその後死亡した際に剖検が行われた症例233例(男性125例、平均年齢72.6歳、女性108例、平均年齢74.4歳)を対象とした。冠状動脈はAHAのsegment分類に従って14ヵ所を切り出し、それぞれの動脈硬化の性状評価と狭窄率の算出を行った。次にそれらの結果を総合的に評価し、個体の冠状動脈硬化度を0から5までの6段階のいずれかに分類した。重回帰分析を用いて生前の検診成績(血圧、肥満度、脂質値、糖尿病関連値、喫煙歴、飲酒歴)と冠状動脈硬化度の関連を検討した。 【結果】冠状動脈硬化度は男女ともに経年的に増悪した。40-50歳代の閉経前後では女性の方が男性より動脈硬化度が軽いものが多く、ホルモンによる影響が考えられた。しかしそれ以降では男女間で有意の差は認められなかった。多変量解析では、男性では年齢、収縮期血圧、血清総コレステロール値、HbA1cが、女性では年齢、収縮期血圧、waist hip ratioが有意の危険因子として抽出された。 【結論】以上より日本人の冠状動脈硬化には、男女とも年齢、収縮期高血圧、そして代謝的要因の関与が強いことが判明した。しかし、代謝的要因の中で最も強く影響を及ぼす因子に関しては男女間で違いが見られた。一方、喫煙との関連ははっきりしなかった。この件に関しては更に注意深い検討が必要と考えられる。
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