2000 Fiscal Year Annual Research Report
スカベンジャー受容体に対する非ウイルス遺伝子導入法を用いた動脈硬化治療法の研究
Project/Area Number |
10670221
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Research Institution | Fukuoka Univ. |
Principal Investigator |
自見 至郎 福岡大学, 医学部, 助手 (30226360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹林 茂夫 福岡大学, 医学部, 教授 (80078740)
太田 孝男 琉球大学, 医学部, 教授 (70185271)
朔 啓二郎 福岡大学, 医学部, 教授 (40183371)
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Keywords | 遺伝子治療 / スカベンジャー受容体 / 動脈硬化 / ペプチドベクター / CETP / HDL |
Research Abstract |
昨年度までの本研究の進行に従い、"スカベンジャーレセプター・クラスBタイプI(SR-BI)発現を抑制すると、血中HDLを上昇させ、抗粥状硬化的に働く"との仮説をたて、動物実験でその有効性を検討することを本年度の目的とした。昨年度までは、非ウイルスベクターとして合成ペプチドN,N-dipalitylglycyl-apoE(dpGapoE)を用いることで、LDL受容体を介し、細胞へのアンチセンス運び込みは可能であり、その遺伝子発現を抑制できた。以上の遺伝子運び込みの特異性に関しては今までに報告してきた。次に、この遺伝子治療を現実のものとするため、血清HDL値が極めて低値を示す低HDLモデルである、ヒトCETP過剰発現遺伝子導入(Tg)マウスを用い検討した。この遺伝子導入法により、肝臓へのコレステロール取り込み口となるSR-BI遺伝子発現を抑制し、血清HDLを増加させうることが期待できる。その為、本マウスでのコレステロール代謝、特にコレステロール蓄積(粥状硬化形成)とその排泄(肝臓への取り込み排泄)機構に着目し検討した。コレステロール負荷食を動物に与えると、HDLが低値を示すTgでは、肝臓へのコレステロール取り込み、および糞中への排泄も増加し、血清総コレステロールは低下し、結果的に野生種に比べTgの粥状硬化病変は減少していた。つまり、この動物は、HDLは低く、SR-BI発現は高く、コレステロールの肝臓への取り込み能は亢進している。しかし、粥状硬化病変形成は抑制されていた。HDLを中心としたコレステロール代謝の詳細はいまだ不明であるものの、本動物モデルでは、肝臓内SR-BI発現を遺伝子治療により抑制することに疑問がもたれた。そのため、本年度はCETP-Tgを用いての生体内SR-BI遺伝子治療には移行できなかった。しかし、将来的に虚血性心疾患のSR-BI遺伝子治療を行う場合の留意点として、脂質代謝とくに肝臓を中心としたコレステロール代謝の動態を考慮に入れたものでなければならないという反省を得ることが出来た。
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