1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10670231
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
多田 功 九州大学, 医学部, 教授 (60064531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後 廣夫 九州大学, 医学部, 助手 (80117225)
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Keywords | ネズミ糞線虫 / 第3期幼虫 / 化学走行性 / ナトリウムイオン / アンフィッド / レセプター阻害 / β-グルコシダーゼ |
Research Abstract |
線虫の頭部に位置するアンフィドに備わる化学センサーは周囲の環境を認識し、走性あるいは反走性などの必要な行動を決定すると考えられている。そして寄生性線虫のアンフィドの場合にも同様に働くと考えられるが、この領域の研究は少ない。そこで我々は動物寄生性線虫のモデルとしてよく用いられるネズミ糞線虫Strongyloides rattiを使い、その第3期幼虫のアンフィドのメカニズムを解明するために化学走性行動を解析中である。これまでにS.ratti第3期幼虫がNa^+に特異的に感受性があり、好適濃度(0.05M)領域に集積することを確認している。今回さらに既知の濃度勾配のNaCl勾配上で、この幼虫の行動をin vitroアガローストラッキング解析法を用いて観察を行った。その結果、NaCl勾配上では幼虫は濃度が0.08-0.1Mより高い濃度領域には決して入らない転向点であることを見出した。この濃度に達すると幼虫は方向を変え、それより低い濃度領域に移動する傾向が認められた。次にこのアンフィドのNa^+濃度認識機能に影響を与える物質を調べた。本幼虫を種々の酵素、レクチン、化学物質で処理し、NaCl勾配上での典型的な行動パターンがどう変化するかを観察した。その結果、β-グルコシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、トリプシン、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼC、スペルミジンなどが行動パターンに有意の影響を引き起こした。即ち、NaCl勾配上で幼虫はNa^+濃度認識機能低下を示唆するような行動パターンを示した。従って、これらの物質処理が幼虫アンフィドのセンサー機能に影響を及ぼしたものと考えられる。現在これらの知見を基にin vitroにおける幼虫移動の修飾状況を観察する実験を準備中である。
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