1998 Fiscal Year Annual Research Report
無人島におけるヒトスジシマカの定着・存続に関する研究
Project/Area Number |
10670234
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高木 正洋 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (60024684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沢辺 京子 長崎大学, 産業医科大学, 助手 (10215923)
杉山 章 名古屋女子大学, 家政学科, 教授 (30196761)
都野 展子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (60295102)
津田 良夫 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (20207393)
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Keywords | ヒトスジシマカ / 無人島 / 遺伝的変異 / 標識再捕獲 |
Research Abstract |
調査地として長崎市飯盛町下釜海岸沖約500mに位置する無人島(前島)とその対岸の集落を選んだ。今年度は、前島及び対岸集落のヒトスジシマカ個体群を継続的に調査するための、標準的調査方法を確立することを第1の目的として定期調査を実施した。調査はヒトスジシマカ成虫が採集された5月から12月までの期間実施した。標準的調査方法として、(1)人囮採集による成虫密度の推定、(2)採集された雌成虫の解剖による経産雌率の推定、(3)実験室内での飼育による寿命調査の3方法を採用した。 人囮採集の結果、合計6種類、1415頭の成虫が採集された。このうちの96%がヒトスジシマカであり、本種が調査地における優占種であった。成虫密度は5月から7月にかけて徐々に増加したが、常に対岸の密度の方が高かった。しかしながら、8月中旬に蚊の防除のために殺虫剤の散布が行われたため、対岸の密度が急減し前島の密度の方が高くなった。その後12月初めま、どちらの個体群でも密度は減少を続けた。前島と対岸の個体群の経産雌率は、5月から7月まで約40〜60%でほぼ等しかったが、9月以降は対岸の経産雌率が40%、前島が65%と大きな違いが見られた。また、室内飼育による寿命調査の結果、どちらの個体群でも平均寿命はシーズンの初期に約30日、終期には約10日と、シーズンの経過とともに短くなる傾向が明らかになった。さらに、対岸の個体群では殺虫剤散布による密度の減少後に採集された成虫の平均寿命は前島よりも長かった。対岸の個体群は8月中旬の殺虫剤の散布によって密度が低下し、その後新たに成虫が羽化したため経産雌率が前島より低く、また成虫の平均寿命も長かったものと考えられる。このように殺虫剤散布という人為的な要因ではあるが、前島と対岸集落のヒトスジシマカ個体群の間に違いが観察され、2つの個体群がかなり隔離されていることが示唆された。
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