2000 Fiscal Year Annual Research Report
無人島におけるヒトスジシマカの定着・存続に関する研究
Project/Area Number |
10670234
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高木 正洋 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (60024684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 章 名古屋女子大学, 家政学科, 教授 (30196761)
都野 展子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (60295102)
津田 良夫 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (20207393)
沢辺 京子 産業医科大学, 医学部, 助手 (10215923)
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Keywords | ヒトスジシマカ / 無人島 / 遺伝的変異 / 個体群パラメター |
Research Abstract |
長崎市飯盛町の沖約500mに位置する無人島「前島」で2000年8月21〜31日の期間、ヒトスジシマカ、Aedes albopictusのmark-release-recapture実験を行った。人囮法によって採集された雌成虫165頭を2組に分け、異なる色の蛍光塗料でマークし、1日目に90頭、2日目に75頭を島中央部の同じ場所から放逐した。放逐後毎日、島内の12カ所で10分間の人囮法によって再捕獲を行った。1日目の放逐個体はその後8日間の調査で30頭(33.3%)が再捕獲された。2日目に放逐された個体で再捕獲されたのは7日間で29頭(0.39%)と、どちらの放逐個体も高い率で再捕獲された。再捕獲された成虫の約78%は放逐場所及びその周囲約10m以内の3カ所で捕獲された。高い再捕獲率と再捕獲個体の空間分布から、放逐された個体は放逐場所からあまり移動せず、放逐場所周辺に留まっていたと考えられる。再捕獲個体数と放逐後の日数の関係を対数回帰分析した結果、日当たり生残率は0.68と推定された。また、1日目と2日目のマーク虫率から推定した1日目放逐個体の生残率は0.43であった。 前島と対岸の集落に生息する集団の遺伝的背景を知るためにアイソザイム分析を行った。99年秋に採集した成虫より得られた卵を孵化させ、両集団の22〜24個体について10酵素15遺伝子座を比較したところ、複数の遺伝子が存在する遺伝子座の割合はともに0.80で、いずれもGpi-1、Hk-1、Hk-2のみが単型的な遺伝子座であった。平均へテロ接合体率は5遺伝子座で有意に異なっていたが、一遺伝子座あたりの平均へテロ接合体率からは両集団間に有意な差はないと判定された。また、各遺伝子座を構成する遺伝子の数や種類、優位遺伝子などもほぼ一致しており、両集団間の遺伝子距離は0.056と非常に小さい値であった。これらの結果から、両集団の間にはタンパク多型からみた遺伝的な差はほとんどないであろうと推察した。
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