2001 Fiscal Year Annual Research Report
無人島におけるヒトスジシマカの定着・存続に関する研究
Project/Area Number |
10670234
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高木 正洋 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (60024684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 章 名古屋女子大学, 家政学科, 教授 (30196761)
都野 展子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (60295102)
津田 良夫 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (20207393)
沢辺 京子 産業医科大学, 医学部, 助手 (10215923)
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Keywords | ヒトスジシマカ / 無人島 / 遺伝的変異 / 個体群パラメター |
Research Abstract |
今年度は本研究課題の最終年度であることから、これまで調査が不十分であった点を補うための追加実験と実験結果の分析を中心に研究を行った。 過去3年間の調査対象としてきた長崎市飯盛町前島に生殖するヒトスジシマカ集団は、この島が無人島であるにもかかわらず、対岸集落周辺に生息する集団と同程度の繁殖状況を保っていることが示唆された。無人島の集団にとって最も大きな問題と思われるのは必要な時期に吸血に成功することであり、そのため吸血動物としてなにを選ぶかということである。これまでの観察では島に生息する鳥類が吸血動物として重要であると考えられた。 鳥類から吸血するためには樹冠周辺にある鳥の休息場所まで吸血のために飛来することが不可欠である。そこで、8月下旬から9月初めの15日間、林内および林縁部でドライアイストラップを地上1m及び10mの地点に設置し、飛来する蚊類の24時間採集を行った。その結果合計1095頭のヒトスジシマカが採集されそのうち51頭(約5%)が上部で採集され、鳥類から吸血する可能性があることが示唆された。 昨年度実施したヒトスジシマカ集団の遺伝的背景の調査結果を補強するために、さらに3カ所の集団からサンプルを得た。現在アイソザイム分析を実施中である。 無人島で実施した記号放逐実験結果を基に、放逐されたヒトスジシマカ集団がどの程度吸血に成功しているのかを推定する方法を理論的に考察し、その適用性を評価するためのコンピューターシミュレーションを行った。新しい分析法は、再捕獲期間を(1)放逐された蚊が吸血に成功し産卵を済ませて2度目の吸血に来るまでの期間と(2)それ以降の期間の2つの期間に分けて分析を行う。分析では初めの期間の調査結果を対数回帰分析し、採集効率の推定値ならびに吸血成功率と生存率の関数関係を求めた。ついでこれらの分析結果を用いて、全体の再捕獲個体数の変化をよりよく説明する吸血成功率と生存率の組み合わせをコンピューターによるくり返し計算法によって求めた。この方法の信頼性を確率過程を考慮したシミュレーションで調べたところ、放逐個体数がある程度大きければ(500頭以上)かなり精確な推定が可能であることが明らかになった。この方法を用いて昨年度実施した無人島での記号放逐実験結果の分析を行い、吸血成功率=25.24%、生存率=0.760、採集効率=0.358という結果を得た。この吸血成功率は過去に長崎大学構内と石垣島で我々が実施した記号放逐実験結果から求められた推定値26.0、27.64%とほぼ等しく、無人島のヒトスジシマカ集団が他の集団と同程度に吸血に成功していることが明らかになった。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Yoshio Tsuda, Masahiro Takagi: "Survival and development of Aedes aegypti and Aedes albopictus (Diptera : Culicidae) larvae under a seasonally changing environment in Nagasaki, Japan"Environmental Entomology. 30・5. 855-860 (2001)