1998 Fiscal Year Annual Research Report
疾病媒介蚊アセチルコリンエステラーゼの殺虫剤非感受性化の遺伝学的生化学的解析
Project/Area Number |
10670246
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
冨田 隆史 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (20180169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 義明 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (10225386)
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Keywords | アセチルコリンエステラーゼ / コガタアカイエカ / 殺虫剤抵抗性 / 有機リン剤 / cDNA |
Research Abstract |
(i)コガタアカイエカ(C.t.)のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)に殺虫剤低感受性をもたらす遺伝因子とAChEの構造遺伝子座の連鎖群解析を行うため,フェニトロオクソンに対するAChEの感受性が系統内で均一に低下した殺虫剤抵抗性系統(Toyama)と感受性系統(Pakistan)を用い,half-sib交配を行い,AChE構造遺伝子配列に関するホモ系統確立を試みた.その結果,両系統において,互いに異なる対立遺伝子のそれぞれが90%程度占めるサブコロ二一を得たが,その固定にはさらに近親交配を継続する必要がある.(ii)Ct.AChEの殺虫剤感受性に関する新たな突然変異系統を確立することを目的として,神奈川県平塚市より20頭の雌カを採集し,個体ごとにフェニト口オクソンによる酵素阻害試験とAChE前駆体コード領域cDNA配列の解析を行った.この内18頭のAChEは,Pakistan力に比較して10^3オーダーの感受性低下を示し,この値はToyama系統力と同レベルであった.他2頭はこれと同レベルの低感受性酵素分子と感受性分子のほぼ等しく混合した個体であり,AChE低感受性遺伝因子に関するへテロ接合個体と考えられる.低感受性酵素のみを保有する1頭が,シグナルペプチド領域の一つのアミノ酸座位に置換を生ずる塩基置換をホモ接合で保有していたが,その他の座位に関してはタンパク質配列多型は見つからず,室内系統を用いて既に得ている「AChE低感受性はタンパク質の一次構造の変異にりもたらされたものではない」という結果に合致した.ToyamaxPakistanによるF_1では,Toyama系統由来の低感受性遺伝因子は不完全劣性を示したのに対し,今回テストした2頭のへテロ接合体では,相当する因子は半優性とみなされた.これらの雌の子孫を得ることには失敗したので,他の殺虫剤感受性室内系統について,同因子の見かけ上の優性の度合いを変更する可能性を解析中である.
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