1999 Fiscal Year Annual Research Report
ウエルシュ菌ガス壊疽に伴う急性腎不全の発症機構におけるα・θ両毒素の役割の解析
Project/Area Number |
10670254
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 央 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20142317)
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Keywords | ガス壊疽 / 腎不全 / θ毒素 / 血管内皮細胞 / EDRF |
Research Abstract |
ガス壊疽の重大な合併症の一つに急性腎不全があり、ガス壊疽の予後を決定する重要な因子の一つである。平成10年度に得られた研究実績を基礎に、ガス壊疽原因菌として最も頻度の高いウエルシュ菌が産生するθ毒素が腎臓のクリアランス機能におよぼす影響をさらに詳細に検討して以下の結果を得た。 1.単離摘出腎臓の生体外灌流実験系による毒素作用の研究 体重250〜350gのSprangue-Dawleyラットの左腎動脈にカニューレを挿入した後、左腎臓を摘出し95%酸素と5%二酸化炭素の混合ガスで飽和し37℃に保温したKrebs液で腎臓を灌流した。1.8ml/minの定流量で臓器を灌流した時の腎動脈灌流圧は、57.5±7.3mmHgであった。灌流液に1HU/mlのθ毒素を添加すると腎動脈灌流圧は急激に上昇した。灌流圧の上昇は、毒素灌流開始後0.5分後に現れる比較的小さなピークと灌流開始後3分で現れる大きな遅いピークの二つのピークより構成されていた。 2.単離摘出腎動脈の血管収縮性に対する毒素作用の研究 ラットから単離摘出した左腎動脈の環状標本について、phenylephrine添加による血管収縮およびacetylcholine添加による血管弛緩に対するθ毒素の影響について検討した。θ毒素で処理した腎動脈は、phenylephrineによる最大収縮収縮張力が有意に増加した。さらに毒素処理腎動脈のacetylcholineによる血管弛緩は30HU/mlの毒素によってほぼ完全に消失した。しかしnitroprussideによる血管の弛緩には有意差が認められなかった。 以上の結果より、θ毒素は血管内皮細胞に作用して、内皮細胞依存性の血管弛緩を抑制しする。その結果、腎臓の循環抵抗が増大して腎臓の乏血が生じることが明らかになった。
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