1999 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス工学的手法を用いた麻疹ウイルス中和抗原H及びF蛋白質の大量発現と応用
Project/Area Number |
10670293
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
佐藤 威 国立感染症研究所, ウイルス製剤部, 主任研究官 (00221284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎並 正芳 金沢大学, 医学部, 助教授 (30168794)
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Keywords | 麻疹ウイルス / 赤血球凝集素 / バキュロウイルス |
Research Abstract |
麻疹ウイルスの感染防御抗原として重要なH及びF蛋白質の構造解析のために、麻疹ウイルスH蛋白質を発現する2種類の組換えバキュロウイルスを作製した。H蛋白質がウイルス感染昆虫細胞より培養液に分泌するようにH遺伝子の細胞質ドメインを除き、インフルエンザウイルスA/Japan株(H3亜型)のHA蛋白シグナル配列を含む16残基をつないだ組換え体バキュロウイルスを作製した。ウイルス感染後数時間で、4時間で20%、24時間から48時間で約80%が分泌され分子量70KのH蛋白質が培養液中に検出出来た。従って、インフルエンザウイルスのHA蛋白のリーダーSequenceは分泌型H蛋白質を大量に回収する手段として有効であった事が示された。 第2番目の組換えバキュロウイルスは、H蛋白質の細胞膜接着付近にファクターXaの切断配列を導入した組換え体バキュロウイルスを作製した。H蛋白質はウイルス感染細胞をファクターXa蛋白分解酵素で処理を行って得られ2量体で存在する事が確認された。 分泌型及びファクターXa切断H蛋白質を大量に回収するために、抗体を用いたアフィニテイクロマトグラフィとゲルろ過クロマトグラフィによって精製を行った。2種類のH蛋白質はミドリサル血球による赤血球凝集活性を示さなかった。麻疹ウイルス豊島株に対するモノクローナル抗体を用い各抗体との反応性を調べた。分泌型H蛋白質はゲルろ過クロマトグラフィによって、大量のアグリゲーションが認められる。しかし、この分画に中和抗体を示すモノクローナル抗体と反応することがわかった。一方、ウイルス感染細胞をファクターXa処理によって得られるH蛋白質は、2量体で存在するにもかかわらず中和抗体のないモノクローナル抗体のみにしか反応しなかった。 新しい麻疹抗体測定法の開発では、得られたH蛋白質をゼラチン粒子に結合させ種々の麻疹患者抗体の抗体価の測定を行った。しかし、現在のところ明瞭な結果が得られていない。今後更に詳しく検討する必要がある。
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