1998 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞初期分化におけるWnt/β-カテニン/TCFシグナル伝達系の役割
Project/Area Number |
10670299
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 真慈 京都大学, 再生医科学研究所, 助手 (60199370)
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Keywords | マウスT細胞初期分化 / Wnt / Frizzled3 / β カテニン / TCF / LEF-1 / シグナル伝達経路 / RT-PCR |
Research Abstract |
マウスT細胞初期分化におけるWnt/β-カテニン/TCFシグナル伝達経路の役割を調べるために、Wnt蛋白質の特異的レセプターとして細胞表面に発現しているFrizzlcdファミリー分子のうちどれがマウス胎仔胸腺で検出されるかを、RT-PCRで調べた。その結果、Frizzled3遺伝子が特異的に転写されていることが判明した。Frizzled3のmRNAは成獣胸腺では検出されないこともわかった。そこで、T細胞初期分化の各段階におけるFrizzled3の発現をさらに解析した。15日目胎仔胸腺のCD3@@S1-@@E1CD4@@S1-@@E1CD8@@S1-@@E1細胞群を細胞表面抗原CD44とCD25の発現で分画すると、Frizzled3遺伝子の転写産物は最も未分化なCD44@@S1+@@E1CD25@@S1-@@E1分画ですでに認められ、次のCD44@@S1+@@E1CD25@@S1+@@E1分画で極大になる。TCR β鎖遺伝子の再構成が開始されるCD44@@S1-@@E1CD25@@S1+@@E1分画では発現が減少し、CD44@@S1-@@E1CD25@@S1-@@E1分画ではさらに減少していた。そして、次の分化段階であるCD4@@S1-@@E1CD8@@S1+@@E1細胞群では検出することができなかった。 マウス胸腺腫由来のT細胞株BTK-24とBTK-24をマウス胸腺に移入して増殖してくる細胞群(BTK-24-it)、におけるFrizzled3の発現を調べた。BTK-24はTCR β鎖遺伝子が再構成されているが、TCR α鎖遺伝子は再構成されておらず、Frizzlcd3を強く発現していた。一方、BTK-24-itはBTK-24がクローナルな分化・増殖したもので、TCR α鎖遺伝子も再構成していたが、Frizzled3はもはや発現していなかった。以上の結果は、胸腺環境下でT前駆細胞がTCR αβ鎖による選択を受ける前の増殖・分化に、Wnt/β-カテニン/TCFシグナル伝達経路が機能しており、シグナルのレセプターとしてFrizzled3が重要であることを示唆している。 次に、シグナル伝達経路におけるLEF-1.Frizzled3の役割を知るために、それぞれの遺伝子産物及びドミナントネガティブフォームをT前駆細胞に導入しT細胞初期分化における影響を調べようとしている。現在、GFPをマーカーに持つレトロウイルスペクターへのクローニングを終了し、高力価の組み換えウイルス産生株を樹立中である。
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