1999 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞初期分化におけるWnt/β-カテニン/TCFシグナル伝達系の役割
Project/Area Number |
10670299
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 真慈 京都大学, 再生医学科研究所, 助手 (60199370)
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Keywords | マウスT細胞初期分化 / 造血系前駆細胞 / シグナル伝達経路 / TCF / LEF-1 / Frizzled3 / レトロウイルスベクター / ドミナントネガティブフォーム |
Research Abstract |
本年度は、(1)レトロウイルスベクターを用いてT前駆細胞に遺伝子を効率よく導入し発現させ、(2)導入遺伝子が発現している前駆細胞をT細胞に分化させうる系を構築することに重点を置いて研究をおこなった。遺伝子導入には、一過性のトランスフェクションでも十分な量の細換ウイルスが確保できるレトロウイルスベクターとウイルス産生細胞株を使用した。組換ウイルス、リンフォカイン、ポリブレン存在下で、12日目マウス胎仔肝臓の造血系前駆細胞が豊富に存在している細胞群をストロマ細胞株TSt-4と共培養して遺伝子導入を試みた。培養の最初に、32℃、毎分1800回転で1時間培養プレートごと遠心する事で、遺伝子導入効率を飛躍的に向上させた。12〜24時間後にマーカーであるGFPの発現を調べると、60%以上の細胞がGFP^+であった。そこで、GFP^+細胞だけを高酸素濃度下でのマウス胎仔胸腺の臓器培養系へ移すと、導入遺伝子を発現している成熟T細胞が分化してくる。1000個のGFP^+になったLin^-c-kit^+Sca-1^<lo>胎仔肝臓細胞を12日間培養した実験では、2.2×10^4個のThy-1^+細胞が得られた。この系を用いて、Wnt/β-カテニン/TCFシグナル伝達経路の分子で、TCF転写因子ファミリーの一つLEF-1のDNA結合ドメインだけを有するものをT前駆細胞に導入し、T細胞分化における影響を調べた。結果はベクターだけを導入したコントロールと同様、T細胞分化は正常であった。In vitroで、このドミナントネガティブフォームは特定のDNA領域に結合することが報告されていたが、今回のデータは、in vivoでは、Wnt/β-カテニンからのシグナルが入ることで初めて転写活性化がおこることを示唆している。現在、LEF-1の転写活性化領域を有するもの、およびFrizzled3とそのドミナントネガティブフォームをレトロウイルスベクターにクローニング中で、最終年度ではまず、LEF-1とFrizzled3のT細胞分化における役割を調べる予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Ohmura,Koichiro: "Emergence of T,B, and myeloid lineage-committed as well as multipotent hematopoietic progenitors in the aorta-gonad-mesonephros region of day to fetuses of the mouse"The Journal of Immunology. 163・9. 4788-4795 (1999)
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[Publications] Ikawa,Tomokatsu: "Commitment of common T/natural Killer(NK)pragenitors to unipotent T and NK progenitors in the murine fetal thymus revealed by a single progenitor"The Journal of Experimental Medicine. 190・11. 1617-1626 (1999)
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[Publications] 藤本真慈: "胸腺T細胞の分化に白血球特異的アダプター蛋白SLP-76が必要である"臨床免疫. 31・6. 710-716 (1999)
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[Publications] Kawamoto,Hiroshi: "T cell progenitors emerge earlier than B cell progenitors in the murine fetal liver"Immunity. (発表予定). (2000)
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[Publications] 田村隆明: "Bio Science新用語ライブラリー 転写因子第2版"羊土社. 227 (1999)