1999 Fiscal Year Annual Research Report
中毒の指標としての血清コリンエステラーゼのホモ比活性
Project/Area Number |
10670326
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
稲垣 弘文 日本医科大学, 医学部, 講師 (50213111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 正康 日本医科大学, 医学部, 教授 (00019639)
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Keywords | コリンエステラーゼ / モノクローナル抗体 / 酵素免疫測定法 / 有機リン |
Research Abstract |
昨年得られた2種類の抗ヒトBChEモノクローナル抗体(BCE-01及びBCE-05)を、各ハイブリドーマ株を大量培養して得られた培養上清より精製した。精製したBCE-01抗体をプレートにコートし、市販抗ヒトBChEポリクローナル抗体と組み合わせてSandwich ELISAを行ったところ、ポリクローナル抗体をコートした場合よりも更に感度が上昇し、検出限界は約5ng/ml、測定可能範囲はおよそ5〜2,000ng/mlとなった。 新たなSandwich ELISA法によって健常人18名の血清を測定したところ、BChE濃度は、56.7±10.7mg/l(Mean±S.D.)となり、ホモ比活性は、21.2±1.3IU/mg(同)となった。ホモ比活性のC.V.値は6.0%で、酵素濃度のC.V.値(19.0%)に比べて小さくなり、ホモ比活性が個人間の酵素濃度の変動を補正できることが確認された。 一方、BCE-01モノクローナル抗体のBChEへの結合は、有機リン化合物であるDEP及びカーバメート剤であるNeostigmineによるBChEの阻害(修飾)によっても影響を受けなかった。また、BCE-01抗体はBChEの酵素活性を阻害しないことから、BCE-01抗体のエピトープは、BChE上の活性部位とは異なるところに存在し、BChEへの阻害剤の結合によってほとんど影響を受けないことが明らかとなった。従って、有機リン等の中毒患者血清中に存在する、阻害剤が結合したBChEにおいても、BChE酵素量の正確な測定が可能であると考えられた。 最後に、本教室に保存してあった、実際の有機リン中毒患者である地下鉄サリン事件被害者数名の血清を分析したところ、回復に伴ってBChEのホモ比活性が上昇することが確認され、また、阻害されたBChEの血液中からの消失時期が明らかとなった。
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