1998 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類におけるマイクロサテライトの塩基配列多型解析によるヒトの進化論的研究
Project/Area Number |
10670387
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
打樋 利英子 名古屋大学, 医学部, 助手 (20223571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 敏充 名古屋大学, 医学部, 助教授 (50260592)
勝又 義直 名古屋大学, 医学部, 教授 (30109326)
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Keywords | マイクロサテライト / 塩基配列多型 / 霊長類 / 進化 |
Research Abstract |
近年,法医学での個人識別や人類遺伝学などの分野において,多型性に富むマイクロサテライトが盛んに利用されているが,霊長類においても各ローカスにおいて多数のアリルが存在すると考えられる.そこで,アリル内部の塩基配列解析による霊長類におけるヒトへの進化の過程の探究を目的として,本年度は4塩基の繰り返し単位(リピート)を有するヒトのマイクロサテライトのひとつであるD14S299(wglc5)ローカスについて,各種霊長類にて検出されたアリルの塩基配列を決定し,ヒトと霊長類間での塩基配列の比較を行った.原猿類,新世界ザル,旧世界ザル,類人猿の各種霊長類のゲノムDNAを試料として,ヒトD14S299を特異的に増幅するブライマーを用いてPCR増幅を行ったところ,原猿類と新世界ザルではほとんど増幅が認められなかったが,旧世界ザ゚ル並びに類人猿では全ての試料において増幅産物が得られた.それら増幅産物の一部について,クローニング法にて各アリルを単離後,塩基配列を決定し,ヒトのアリルの塩基配列と比較した.ヒトに最も近縁であるチンパンジーでは,ヒトと比較すると1塩基の置換があるのみで,それ以外には相違はなかった.なお,この置換は他の全ての霊長類においても観察された.ヒトにおいて存在する3ケ所の多型的リピート部位は霊長類においても存在しており,チンパンジー以外の霊長類ではさらに1ケ所のリビート部位がみられ,計4ケ所あリビート部位を有していた.また,旧世界ザルであるマカク属のニホンザルとカニクイザル間では,同じ塩基配列構造を示し,マカク属に特徴的と思われる配列も認められた.以上の結果から,D14S299のリビート構造は,霊長類においても基本的にはほぼ同じであるが,属あるいは種によって特徴的な配列を有することがわかった.
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[Publications] 打樋利英子ら: "霊長類におけるD14S299(wglc5)の塩基配列解析." DNA多型. 7 (in press). (1999)
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[Publications] Yoshimoto,T.et al.: "Sequence analysis of alleles at a microsatellite locus D14S299(wglc5) and population genetic comparisons." International Journal of Legal Medicine. (in press). (1999)