Research Abstract |
法医病理学において急死の原因を正確に診断することは重要な課題であり,特に急性心臓死や乳幼児突然死症候群など死亡原因が十分明らかにされていない例ではその機序の解明が急がれている.法医剖検例のうち死後24時間以内に剖検された内因死または外因死症例についえFibronectin,C9,TroponinIを用いて,免疫組織化学的に心筋の障害部位,程度並びに心筋障害の時期について検討した.対象は(1)内因死症例として,剖検時明らかな梗塞巣が認めれらた5例,心筋梗塞が疑われた6例,肺炎・心筋炎等の12例,乳幼児急死症例12例(2)外因死症例として,窒息死(溺死,絞・扼頚,縊頚)13例,ショック死及び失血死5例,頭部外傷10例の合計63例である.組織標本は,心臓の左心室前壁,心室中隔および右心室壁より組織片を採取し,パラフィン包埋後連続切片を作製した.染色法は,一般染色としてH.E染色,PTAH染色を行い,また免疫組織化学的染色として抗Fibronectin抗体,抗C9抗体,抗体Troponin I抗体を用い,ABC法にて染色を行った.免疫組織化学的染色の染色動態は,全く陽性像が認めれれないもの,少数のsingle myocardial cellが散在的に陽性像を示すもの,陽性像が集積して認められるものといった3つのグループに大別され,心筋障害の程度を反映するものと考える.また,Fibronectin,C9,Troponin Iの染色像は同一症例でも異なった結果を示し,症例によっては一部の抗体にのみ陽性像が発現するものが認められた.このことは心筋障害時における発現時間の違いによるものと考える.これらの内,C9は早期の心筋障害と考えられる例でもその発現が認められた.なお,頭部外傷3例,縊頭1例及び乳幼児突然死症候群3例においてはいずれの抗体においても陽性像は認められなかった.
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