Research Abstract |
現在,コレステロール(以下,Ch)胆石症に対する溶解療法(経口胆汁酸療法)の成功率は低く長期間を要することから,より有効な薬物療法の開発が望まれる.最近,我々は,魚油(エイコサぺンタエン酸;EPA)が胆汁中レシチンを増加させCh結晶析出を抑制することによりCh胆石の予防効果を発揮することを見出した. 本研究では,EPAがCh胆石に対して治療効果をも有するのではないか,との仮説に基づき,魚油(EPA)の胆石溶解効果を臨床的および実験的に探究することを目的とし,本年度は「胆嚢胆石患者に対するEPA長期投与の胆汁中脂質組成,Ch析出動態改善効果」を検討した. 対象は,軽症ないし無症状の胆嚢胆石患者のうち,本人から同意の得られた22例である.EPA製剤(持田製薬エパデール錠)1800mg/dayを1年間経口投与し,試験開始前と6カ月後に,内視鏡下にセルレチド筋注後B胆汁を採取し,1)胆汁中脂質組成分析,2)胆汁中脂肪酸組成,3)Ch結晶析出時間の測定,4)胆嚢収縮能の評価(超音波法),5)画像検査(腹部超音波ならびに経口胆嚢造影)による胆石溶解の評価を行なった.その結果,EPA製剤の6カ月間経口投与後,胆汁中のレシチン濃度は有意(P<0.01)に上昇し,Ch過飽和度は約20%減少した.レシチン中の脂肪酸組成は,EPAが上昇(P<0.01)すると共に,リノール酸,アラキドン酸が共に減少した(P<0.05).さらに,胆汁中のCh結晶析出時間が有意に延長した(P<0.01).胆嚢収縮能に有意な変化は認められなかった. 以上,本研究により,EPA製剤の経口投与は,胆汁中レシチンを増加させ,レシチン中脂肪酸組成を変化させることにより,胆石患者のCh結晶析出を抑制することが新たに判明した.現在,Ch胆石の溶解効果について画像的な評価を行っている.
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