1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10670529
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢内 勝 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (00210287)
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Keywords | 好中球 / 細胞骨格 / 粘弾性 / 仮足 / 細胞内圧 |
Research Abstract |
宿主の組織に炎症が生じると、白血球は、毛細管近傍の小静脈で捕捉され、ローリングした後、接着、血管外遊走を行い炎症部位に到達する。細胞遊走する際には、白血球は大きく動的な変形を受ける。この時、細胞骨格は、細胞内で不均等に重合、脱重合され、それに従い、細胞質の粘性と弾性も動的に変化するはずである。細胞遊走のメカニズムを解明するため、正常人の遊走中の好中球において細胞質の粘性、弾性を仮足進展部、体部、尾部でそれぞれ測定し、その部位による差異の有無を検討した。 好中球の細胞質内には直径0.5μm以下の顆粒が多数存在する。これらの細胞内顆粒を光トラップにより捕捉して、正弦波で強制振動を加える。光トラップの振幅、顆粒の振幅、顆粒がトラップから遅れる位相差より強制振動させている顆粒周辺の細胞質の弾性係数および粘性を分離測定した。 遊走中の好中球の細胞質粘弾性は、細胞内の部位によって異なり、仮足進展部では、体部、尾部に較べて弾性係数は1/20、粘性は1/6といずれも著明に低下していた。体部、尾部では粘性、弾性ともに有意の差は認めなかった。時定数は、体部、尾部では、それぞれ0.3秒、0.5秒に対して、仮足進展部では1.7秒と延長していた。 粘性、弾性の絶対値、時定数ともに、仮足進展部の細胞質はより液体であることを示しており、細胞内圧により細胞質が押し出されて仮足が形成されることが示唆された。
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