1998 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮性側索硬化症におけるグルタミン酸受容体のCa透過性の異常に関する研究
Project/Area Number |
10670575
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郭 伸 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (40160981)
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Keywords | ALS / 筋萎縮性側索硬化症 / グルタミン酸受容体 / GluR2 / RNA編集 / RT-PCR / カルシウム透過性 / 神経細胞死 |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症でみられる選択的運動ニューロン変性の病因は解明されていない。病因仮説として、AMPA/カイニン酸受容体チャネルを通じたCaイオン透過性の亢進が有力視されている。本研究ではこの受容体にCa透過性の変化を引き起こす分子変化が生じているかどうかを調べた。剖検脊髄を用いてALSにおけるAMPA受容体のCa透過性を促進させる分子変化(GluR2サブユニット mRNA発現量の低下、GluR2 RNA編集率の低下)の有無を検討した。ALS 10例、正常対照9例、疾患対照7例の、剖検時凍結保存した脊髄を前角・後角・白質の3部位に分け、それぞれからRNAを抽出し、AMPA受容体各サブユニット(GluR1〜4)およびG3PDHに対するRT-PCR法を施行した。mRNA発現量は、G3PDH RT-PCR産物に対する各サブユニットRT-PCR産物の比として算出した。GluR2の転写後編集率はGluR2のPCR産物を制限酵素で消化した結果得られた断片長の分析により検討した。ALS脊髄前角ではGluR2 mRNAの発現量および転写後編集率のいずれもが、統計的に有意に低下していた。これらの変化はAMPA受容体のCa透過性を亢進させ、また神経細胞死を引き起こすことが動物実験から知られていることから、ALS脊髄前角細胞の神経細胞死を促進させるものであると考えられる。GluR2のRNA編集率の低下は他の神経疾患では生じていない変化であり、ALS脊髄前角に部位・疾患特異的であることは、GluR2のRNA編集率低下が弧発性,ALSの直接の病因になっているか、もしくはALSの病因が同時にGluR2 RNA編集率を低下させることで神経細胞死を促進させていることを示唆している。こんごGluR2 RNA編集率を低下させる分子変化をALSで検討し、真の病因を確定することを目的とする。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 相澤仁志: "実験的遅発性興奮性運動ニューロン死" Clinical Neuroscience. 16. 896-900 (1998)
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[Publications] 相澤仁志: "インスリン様成長因子-I(IGF-I)" 脳と神経. 50. 606-613 (1998)
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[Publications] 郭 伸: "神経変性疾患とグルタミン酸受容体チャネル" 現代医療. 31(印刷中). (1999)