1998 Fiscal Year Annual Research Report
末梢神経傍絞輪部局在性ガングリオシドの同定と実験的免疫性ニューロパチーの作成
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10670576
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠 進 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (90195438)
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Keywords | ガングリオシド / ミエリン / ニューロパチー / 末梢神経 / ギラン・バレー症候群 / 糖脂質 / 自己免疫 / 脱髄 |
Research Abstract |
末梢神経ミエリン、とくに傍絞輪部ミエリン、はGuillain-Barre症候群(GBS)における自己免疫機序の標的部位として知られ、同部に局在する糖脂質は標的抗原として重要である。われわれは既にガングリオシドGD1bがヒト末梢神経の一次感覚ニューロンと傍絞輪部ミエリンに局在することを報告しているが、今年度は抗GD1b抗体(GM1と交差反応しないもの)陽性のGBS症例の臨床特徴を解析した。その結果抗GD1b抗体陽性GBSは上気道感染を先行感染とし、比較的重症度は低く、電気生理学的には脱髄を主体とする変化がみられ、感覚障害を伴うことが比較的多いという結果が得られた。これは抗GD1b抗体がGD1b抗原の局在する傍絞輪部ミエリンや一次感覚ニューロンに結合して発症機序に関与していることを示唆する所見である。同じくヒト末梢神経ミエリンに局在することが知られるガングリオシドLM1に対する抗体陽性のGBSでは、やはり上気道感染を先行感染とする比較的軽症のものが多く、電気生理検査では脱髄を主体とする変化がみられた。さらに抗LM1抗体陽性例は、抗GQ1b IgG抗体の上昇が同時にみられるものが多く、眼筋麻痺を伴うことが多かった。以上からミエリン局在性ガングリオシドに対する抗体は、抗原ガングリオシドの局在に対応してミエリンに結合し、軸索障害ではなく脱髄をきたすことが示唆された。一方、脱髄性ニューロパチーとは異なるが、一次感覚ニューロンに局在するGD1bをウサギに免疫して作成した実験的感覚障害性失調性ニューロパチーにおける、血中抗体の解析から、GM1には交差反応せずGD1bを特異的に認識するIgG抗体がこの動物モデルの発症因子として重要であることを明らかにした。自己免疫性ニューロパチーの病態解明には抗ガングリオシド抗体の分析が重要であり、特に微細反応性まで含めた解析が必要であることが示された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Kusunoki S,Hitoshi S,et at.: "Monospecific anti-GD1b IgG is required to induce rabbit ataxic neuropathy" Annals of Neurology,in press.
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[Publications] Hitoshi,S,Kusunoki S,et al.: "Anti-GD1b antibody-mediated trkC downregulation of dorsal root ganglia neurous" Neuroscience Letters,in press.
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[Publications] Oga T,Kusunoki S,et al.: "Severe motor-dominant neuropathy with IgM M-protein binding to the NeuAc 2-3Gal-moiety" Journal of the Neurological Sciences. 154. 4-7 (1998)
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[Publications] Arasaki K,Kusunoki S,et al.: "The pattern of antiganglioside antibody reactivities producing myelinated nerve conduction block in vitro" Journal of the Neurological Sciences. 161. 163-168 (1998)
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[Publications] 楠 進: "Fisher症候群の病態と治療:特異抗体の関与" 日本内科学会雑誌. 87. 617-622 (1998)
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[Publications] 楠 進: "慢性自己免疫性ニューロパチーを抗糖脂質抗体" 神経免疫学. 6. 19-25 (1998)