Research Abstract |
昨年は,眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)における筋線維障害の機序および他の神経筋疾患におけるPABP2の意義を検索するため,ヒトPABP2cDNAをもとに正常C端部近傍の22アミノ酸よりなるペプチドを合成し,その特異抗体を作製して免疫組織化学的に検討した.その結果,眼咽頭筋ジストロフィー患者のみに,骨格筋筋鞘核内に平均2%の頻度で抗PABP2抗体陽性の異常蓄積物を認めた.今年度は,骨格筋を対象にイムノブロットを施行したがOPMD患者,疾患対照,正常対照のいずれにおいても陰性であった.その理由としては,1)正常筋核内PABP2-蛋白の濃度が極めて低いか,代謝回転が非常に早く,(GCG)nリピートの延長にコードされる変異蛋白では正常型の蛋白の量が増えている可能性,2)今回偶然にも,変異PABP2蛋白のみを認識する特異抗体ができてしまった可能性,3)正常PABP2蛋白の立体構造上,親水性の部分が蛋白のfoldingによって通常内側に包まれた形になっているが(推定),変異蛋白によりそれがくずれて染色性がでてくる可能性が想定された.次に,OPMDと類縁疾患の病態解明の目的で,PABP2変異を同定したOPMD確定7家系45例とOPMD疑い5家系7例について家系調査,診察,採血,筋電図,筋生検,筋CT,流体力学的検査,VTR咽頭食道造影,誤嚥シンチ,PABP2解析,及び抗PABP2抗体の免疫組織化学染色を可能な限り施行した.その結果,(1)OPMDの(GCG)n-は,n=8:1家系,n=9:2家系,n=10:1家系,n=11:3家系で,うちn=9の抗PABP2抗体に対1家系は孤発例であった.Repeat数と重症度との相関は,n=9-11間では明らかではなかった.全例外眼筋麻痺は軽微で,遠位筋優位の筋力低下は認めなかった.(2)OPMD疑い7例中N家系2同胞例は臨床的にはOPMDに酷似していたが,PABP2変異はなく,抗PABP2抗体の染色性も陰性で,電顕上ITFIも認めなかった.他の5例はいずれもPABP2変異/抗PABP2抗体染色は陰性であり全例孤発例であった.(3)筋生検上,ミトコンドリア病を示唆する所見は認めなかった.
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