1999 Fiscal Year Annual Research Report
クレチン症マススクリーニングの落とし穴-母由来の抗マウス抗体による偽高TSH血症
Project/Area Number |
10670699
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
伊藤 善也 旭川医科大学, 医学部, 助手 (70241437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 拓磨 旭川医科大学, 医学部, 助手 (70312452)
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Keywords | 新生児マス・スクリーニング / TSH / HAMA / クレチン症 / 偽高TSH血症 / 抗TSH抗体 |
Research Abstract |
[目的]われわれは昨年度の本研究において経胎盤的に移行したhuman antimouse antibody(HAMA)が新生児で抗TSH血症を呈すること、乳児一過性高TSH血症と類似の臨床経過をとることを報告した。今年度は母体由来で、経胎盤的に移行した抗TSH抗体による抗TSH血症の母子例を解析した。 [方法]新生児マス・スクリーニングにおいてTSH高値で、fT4が正常であった兄弟例(症例1、2)とその母親(症例3)を対象とした。症例1と2にはいずれも甲状腺機能低下症の臨床症状を認めず、生後5か月でTSHが正常化した。一方症例3は観察期間中fT4は正常であったが、TSHが22.9μU/mlと高値であった。なお症例3のTSH受容体抗体値は-98.2%であった。これらを対象に血清のTSH結合率、ゲルろ過HPLCによる血清TSHの溶出パターン、IgG分画のヒトTSH結合率を検討した。 [結果]症例1と2は甲状腺機能が完全に正常化しているので、解析は行わなかった。^<125>IウシTSHを用いてTSH結合率を調べると症例3では69.3%(正常対照7.4%)であった。さらに^<125>IヒトTSHでは55.1%(正常対照10.4%)であった。血清TSH溶出プリフィルをみるとTSH分子量に一致するピークの他にIgGの分子量150000の近傍にもピークを認めた。そこで血清を酸性バッファーで透析した後にゲルろ過HPLCを行って、IgG分画を抽出し、ヒトTSHとの結合率をみると37.2%(ブランク13.1%)であった。以上より症例3にはTSHと結合するIgGすなわち「抗TSH抗体」の存在が証明された。 [結語]新生児マス・スクリーニングにおいて新生児に加えて、母親にもTSH高値を認めるときはTSH測定系に干渉する抗体の存在を留意すべきである。
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