Research Abstract |
本研究の目的は,造影CTでの組織造影効果のコンパートメント解析による病理・組織性状の定量的診断法の開発である.最終年度には造影超高速CTによる正常と梗塞心筋のデータを使用し,下記の解析プログラムで算出した組織構築指標の値と,組織構築の簡易推定指標であるM/L値;心筋(M)と心大血管内腔(L)の増加CT値比,を対比検討した. 1.コンパートメント解析プログラムと心筋組織構築指標 解析プログラム:dM/dt=A^*F+B^*M,A=a^2/3/b^*(a^*k2+b^*k1),B=-a^2/3/b^*k2 ここで,M:心筋増加CT値,F:大血管内腔増加CT値,a:組織血管床容積率,b:間質容積率,k1:血管床→間質の造影剤移行係数,k2:間質→血管床の造影剤移行係数. 上記プログラムを調整のうえ全指標を算出した結果,正常心筋の平均値はa;8%,b;36%,a+b;45%,k1(=k2);0.077,梗塞ではa;3%,b;58%,a+b;64%,k1;0.112,k2;0.070となり,病理学や解剖学の報告によく合致した. 2.M/L値との対比検討 M/L値は関心領域内の造影剤分布スペースの広さを反映する.造影早期と後期(造影後4分)のM/Lの平均値は,正常心筋で各々31%,51%,梗塞で24%,81%であり,梗塞心筋は正常に比べ早期M/Lは有意に低値(p<0.05),後期は高値(p<0.01)であった. (1)aと早期M/L,(2)bと後期M/L-早期M/L,(3)a+bと後期M/L,の対応について,全例での相関係数と両指標の比は,(1)R=0.71,比;0.21,(2)R=0.92,比;1.74,(3)R=0.91,比;0.87,であった.いずれの組合せも良好な有意相関を示したが,血管床容積(a)は早期M/Lよりかなり小さく,細胞外液腔容積(a+b)も後期M/Lよりやや小さいことが明らかになった. 以上のように,造影CTで容易に得られるM/L値と解析プログラムでの指標値には高い相関のあることから,M/L値の変換によって組織構築指標の推定が簡便に行える可能性が示された.
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