1998 Fiscal Year Annual Research Report
気分障害における候補遺伝子解析-IMPA2を中心に
Project/Area Number |
10670891
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
吉川 武男 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (30249958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 明子 東京医科歯科大学, 医学部, 技官 (40210992)
車地 暁生 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (00251504)
澁谷 治男 国立療養所, 南花巻病院, 院長 (10158959)
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Keywords | 気分障害 / 精神分裂病 / 連鎖解析 / IMPA2 / ケースコントロールスタディ / 染色体18番 |
Research Abstract |
<緒言> 精神疾患の1つである躁欝病は、連鎖解析から染色体18番短腕に関連遺伝子の存在が示唆された。最近この領域から、我々は候補遺伝子myo-inositol monophosphatase2(IMPA2)を単離し、missensse mutation(His76Tyr in exon2)とIVS1-15G>Apolymorphism(intron i)を同定した。IMPA2遺伝子の局在部位のごく近傍は、つい最近精神分裂病と感情病の両方を含む家系でも連鎖が報告された。よって今回の研究では、上記2つの多型を用いて感情病ないし分裂病の遺伝的解析を、ケースコントロールデザインで行うこととした。 <方法> 感情病(単極性89名、双極性101名)、分裂病(298名)および正常対象者(315名)の末梢血よりDNAを抽出し、PCRで目的部位を増幅した。His76Tyr部位は、以下のプライマーを用いることによりmissensseが制限酵素Tsp45 Iで識別できるようにした。forward:5'-GTTGCGAGAGAGGTTTCCGTCA-3'(5'end at nt 365);reverse:5'-CCACATCAACAAACAGCAGAGC-3'(5'end at nt IVS2+102)。IVS1-15G>A 部位はそのままでも制限酵素Rsa Iで識別可能で、PCRには以下のプライマーを用いた。forward:5'-TGGGAGGAGGATGTTTGCATG-3'(5'end at nt IVS1-51):reverse:5'-CTGCATTCTCTATGAGTGTGG-3'(5'end at nt IVS2+61)。またシークエンスによる解析は、Big Dye TerminatorおよびAB1377を用いて行った。 <結果> His76Tyr部位については、感情病、分裂病、正常対象者を各100例以上解析したが、missensseは見いだせなかった。よってこの変異は非常に稀であるといえる。IVS1-15G>A多型を用いたケースコントロールスタディでは、感情病では対照群と比べて対立遺伝子頻度および遺伝子型ともに有意な分布の偏りは見られなかった。分裂病では、対照群と比較してG対立遺伝子頻度がが有意に高く(χ2=9.95,P=0.0016)、遺伝子型を(A/A+A/G)とG/Gに分けた場合、G/Gは対照詳と比較して有意に高頻度であった(χ2=14.2,P=0.00016,95%CI=1.36-2.59)。これらの結果を踏まえて、IVS1-15G>A多型と連鎖不平衡にあり分裂病の発症により関係すると思われる機能的変異を見いだすため、G/G遺伝子型をもつ分裂病患者15人を選び全エクソンをシークエンシングによりスクリーニングした。その結果新たに次の7つの変異を同定した。(1)-547G>A (promoter)、(2)-300C>T(promoter)、(3)-24G>A (promoter)、(4)320T>C(Leu53Leu)(exon 2)、(5)IVS5+13-14insA(intron5)、(6)675T>C(Arg178Arg)(exon6)、(7)998C>G(Thr279Thr)(exon8)いまだ予備的段階であるが、以上のうち-24G>A多型が分裂病に関連している印象を得ており、現在解析を継続中である。
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