2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10670903
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
林 泰資 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 教授 (80173037)
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Keywords | ストレス / てんかん / ポリアミン / アセチルポリアミン / カイニン酸 / 細胞死 / プトレッシン / FK506 |
Research Abstract |
ストレスと脳内ポリアミン代謝との関連性を検討するために,カイニン酸誘発てんかんや拘束浸水ストレスを実験動物に負荷し,脳のポリアミン濃度を測定した。 (1)カイニン酸誘発てんかんと脳内ポリアミン代謝 マウスやラットにカイニン酸を皮下投与し,てんかん活動を誘発した後,前頭皮質,海馬,梨状皮質のポリアミン(プトレッシン,スペルミジン,スペルミン)およびアセチルポリアミン(N-アセチルスペルミジンとN-アセチルスペルミン)を定量した。アセチルポリアミン定量のためには,ポリアミン酸化酵素阻害剤であるMDL72527を前処理した。その結果,ほとんどの脳部位でプトレッシンとアセチルポリアミンの増加が見られた。これは,カイニン酸によるてんかん活動によって,ポリアミン合成反応と分解反応が活性化したことを示している。 カイニン酸投与は激しいけいれん活動とともに神経細胞死を誘発する。そこで,細胞死のみを抑制するFK506と,けいれん活動のみを抑制するジアゼパムをカイニン酸投与の前にラットに投与した。FK506はポリアミン代謝に影響を与えなかったが,ジアゼパムはこれを抑制した。この結果は,ポリアミン代謝がカイニン酸によるけいれん活動と,より密接に関連していることを示唆している。 (2)拘束浸水ストレスと脳内ポリアミン代謝 マウスに拘束浸水ストレスを負荷し,前頭皮質,海馬,視床下部のポリアミン濃度を定量した。ストレス負荷から24時間後,すべての脳部位でプトレッシンの増加が見られた。この増加は48時間後にはコントロールレベルに戻った。また,抗不安薬であるジアゼパムの投与によりプトレッシンの増加は抑制された。スペルミジン濃度にはほとんど変化が見られなかったが,スペルミン濃度はストレス負荷から6時間および24時間後に前頭皮質と視床下部で減少した。 以上より,脳内ポリアミン代謝は種々のストレス条件下で亢進し,結果的にプトレッシンが増加する。プトレッシンは脳内抑制物質として示唆されていることから,ストレスを緩和する役割を持っていることが考えられる。
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Research Products
(1 results)