1999 Fiscal Year Annual Research Report
糸球体細胞の各種因子の発現に及ぼす伸展刺激の影響とその分子細胞生物学的機序の解明
Project/Area Number |
10670985
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Research Institution | The University of Tokyo School of Medicine (Branch Hospital) |
Principal Investigator |
要 伸也 東京大学, 医学部・附属病院分院, 助手 (60224581)
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Keywords | 伸展刺激 / メサンギウム細胞 / TGF-β / LTBP / PDGF / LOX-1 |
Research Abstract |
培養メサンギウム細胞において、伸展刺激はPDGF発現を亢進させるが、発現量はPDGF-A鎖の方が多く、増加の割合はPDGF-B鎖の方が大きかった。また、伸展刺激により、TGF-βだけでなく、TGF-β受容体I型およびII型の発現と結合量の増加を認めた。LTBPの発現も増加し、伸展刺激後のコラーゲンの増加が、LTBPのオリゴペプチド添加によって阻害されることより、TGF-βの活性化または作用発現にLTBPと細胞外基質の結合が重要であることが示唆された。このように、伸展刺激は一部PDGF、とくにPDGF-BBまたはPDGF-ABを介して、TGF-βの発現、活性化、受容体との結合の各段階を促進し、コラーゲンの発現を増加させていると考えられた。酸化LDLもTGF-βないしコラーゲンの発現を亢進させるが、伸展刺激は、このような酸化LDLによるコラーゲンの発現をさらに増強する。一方、最近発見された内皮型酸化LDL受容体、LOX-1の発現を血管内皮細胞で検討してみると、伸展刺激、TGF-βなどのサイトカインだけでなく、酸化LDLそのものによっても刺激されることが示された。さらに、LOX-1の発現は、高血圧ラットの大動脈、Dah1食塩感受性ラットの腎臓で著明に亢進しており、in vivoにおいても、高血圧などの物理的ストレスや脂質代謝異常、酸化ストレスなどによりLOX-1発現が制御されることがわかった。 以上の結果は、糸球体高血圧の下では、TGF-βをはじめとする増殖因子の作用が増加するだけでなく、脂質異常による糸球体障害作用が増強され、さらにこの過程に酸化LDLないしLOX-1亢進を介した内皮細胞障害が関与している可能性をも示唆している。
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