1999 Fiscal Year Annual Research Report
L-arginineの糸球体硬化に対する逆説的用量依存性効果の機序解明
Project/Area Number |
10671014
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
中西 健 兵庫医科大学, 医学部, 助教授 (70217769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平岡 敬介 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (60248135)
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Keywords | 5 / 6腎摘ラット / L-アルギニン / 一酸化窒素 / 糸球体硬化 / 間質繊維化 |
Research Abstract |
一酸化窒素(NO)は進行性腎機能低下の主因である糸球体硬化抑制に重要な役割を果たしていると推測されている。しかしNOの産生基質であるL一アルギニン(L-arg)の、種々の腎疾患モデルにおける腎機能、血圧、糸球体硬化に対する効果は、報告者により異なっており定見がない。L-argの効果が一定しないのは腎疾患モデルやL-argの投与量が報告者により異なっているためと考え、糸球体硬化モデルである516腎摘ラットを用いL-arg非投与群(ARG(-)群)、ARG 0.2g/kg/day投与群(0.2gARG群)、1g/kg/day投与群(1gARG群)、2.0g/kg/day投与群(2gARG群)の4群に分け、腎機能、糸球体組織およびL-arg-NO代謝に対する効果を検討した。腎機能、尿蛋白および糸球体硬化指数(SI)、間質線維化比率(%INT)はARG(-)群に比し、○.2gARG群でのみ改善が認められ、他の群では変化がないか増悪が認められた。L-arg-NO代謝においては一日尿中NO代謝物排泄量(NOX)及び一日尿中cGMP排泄量(cGMP)は0.2gARG群でのみARG(-)群に比し有意な増加を認めた。腎不全患者の循環器系異常への関与が示唆されている内因性NO合成酵素(NOS)阻害物質である血中asymmetricaldimethyl arginine(ADMA)濃度はARG(-)群に比し、0.2gARG群でのみ有意な低下を認めた。血中及び尿中L-argは0.2gARG群においてはARG(-)群に比し有意差は無かったが、1gARG群、2gARG群では有意な増加を認めた。そしてNOXとGSI、%INTおよびADMAとの間に各々有意な負の相関関係を認めたが、血中および尿中L-argとは有意な相関関係は認めなかった。以上から、糸球体硬化モデルである5/6腎摘ラットにおいて、低用量L-arg投与は尿蛋白、腎機能、糸球体硬化、間質の線維化を改善させるが、高用量L-arg投与では逆に悪化させることを明らかとした。またこれらの改善効果はL-argからのNO産生量と関連しているが、NO産生量は必ずしもL-arg投与量と正相関しているわけではなく、ADMAなどにより修飾されると考えられた。
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