1999 Fiscal Year Annual Research Report
核黄疸におけるビリルビンのアポトーシスによる神経細胞障害
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10671018
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University, Medical Research Institute |
Principal Investigator |
山口 登喜夫 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (30134745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝海 伶 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (20167224)
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Keywords | ビリルビン / 核黄疸 / アポトーシス / ニューロン / ビリベルジン / ウロビリン / ステルコビリン / ミトコンドリア |
Research Abstract |
ビリルビンは、古くから新生児における核黄疸を引き起こすことが知られている。これはビリルビンと生体膜、特に、ganglioside,phospholipidとがcomplexを形成することにより膜の機能障害をきたし発症につながるという説があるが、仮説の域をでない。そこで、ヘムの代謝産物であるビリルビンを始めとして、生体にとって無害と信じられていたビリベルジン、ウロビリン、ステルコビリンについて細胞への影響を改めて検討したところ意外な事実が見つかった。まず、小脳の顆粒細胞の10%の胎児血清存在下での初期培養ニューロンを用いて検討したところ(未発表データ)、ビリルビンは、30μg/mlで毒性を24時間以内に示した。その死の形態はネクローシスではなくアポトーシスであった。無害と信じられているビリベルジンは、驚いたことに3μg/mlと低濃度にもかかわらずアポトーシスを引き起こした。一方、ウロビリン、ステルコビリンに関しては高濃度(30μg/ml)にもかかわらず、二週間以上全く毒性を示さなかった。ニューロン以外の細胞についても同様の検討を行ってみた。ステロイドを産生する卵巣細胞を使ったところ、胎児血清が存在するとビリルビン、ビリベルジン、ウロビリン、およびステルコビリンも全て毒性を示さなかった。しかし、無血清培地では、ビリルビン(30μg/ml)、ビリベルジン(3μg/ml)でアポトーシスを引き起こした。一方、ウロビリン、ステルコビリンは無害であった。これらの結果から次の疑問が生まれる。 (1)ニューロンは、何故、血清の存在下でもビリルビンでアポトーシスを引き起こすのか?(2)これまで無害とされてきた、ビリベルジンがきわめて低濃度でアポトーシスを引き起こすが、何故か?(3)毒性の形態はアポトーシスであるが、ビリルビン、ビリベルジンがどの様なルートでアポトーシスのシグナル系を活性化するのか?(4)ニューロン以外の細胞での障害のメカニズムは、ニューロンとは異なるのか?ビリベルジン、ビリルビンがニューロンにアポトーシスを引き起こしたことは、核黄疸の発症メカニズムにアポトーシスの関与の可能性が示されたことになる。 アポトーシスのシグナル系の分子については、bcl-2、カスパーゼ、チトクロームCなど、近年目覚しい早さで解明されてきている。このシグナル系のどの分子にビリルビン、ビリベルジンが関与するかを決定する必要がある。このように、細胞内での標的分子を同定することで、アポトーシスの過程の詳しい分子ルートが判明されれば核黄疸の予防法や治療法に新たな展開が可能となる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Sinobu Hayashi et al.: "Induction of heme oxygenase-1 suppresses venulor laukocyte adhesion elicited by oxidative stress."Circulation Research. 85. 663-671 (1999)
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[Publications] Yuichi Shinoda et al.: "Carbon monoxide as a regulator of bile conalicular in cultured rat Nepatocytes."Hepatology. 28(2). 286-296 (1998)
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[Publications] Tokio Yamaguchi et al.: "Bilirubin oxidation provoked by treatment is suppressed by feeding ascorbic acid in a mutant unabled tosynthesize ascorbic acid"Eur. J. Biochem.. 245. 233-240 (1997)
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[Publications] Tsuyoshi Sano et al.: "Endogeneous carbon monoxide suppression stimulates bile acid dependent biliary transport in perfused rat liver."Am. J. Physiol.. 272. G1268-G1275 (1997)
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[Publications] Tadashi Sakai et al.: "Severe oxidative stress is thought to be a principal cause of jaundice of yellowtail Serina Quingeradiata."Aguacu Hare. 160. 205-214 (1998)
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[Publications] Tokio Yamaguchi et al.: "Taurocholate induces directional excretion of bilirubin into biles in the perfused rat liver."Am. J. Physiol.. 270. G1028-G1032 (1996)
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[Publications] 山口登喜夫 他: "日本臨床(第750号増刊)広範囲血液・尿化学検査・免疫学的検査 -その数値をどう読むか-"日本臨床社. 824(327-332) (1999)
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[Publications] 山口登喜夫 他: "Free Rachicels in Clinical Medicine (フリーラジカルの臨床 Vol 11)"日本医学館(監修:近藤元治). 119(79-84) (1997)