1998 Fiscal Year Annual Research Report
転写共役因子異常によるアンドロゲン不応症の疾患概念の確立と病因共役因子の構造決定
Project/Area Number |
10671037
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高柳 涼一 九州大学, 医学部, 講師 (30154917)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名和田 新 九州大学, 医学部, 教授 (10038820)
|
Keywords | アンドロゲン / 転写因子 / 共役因子 / アンドロゲン不応症 / 睾丸性女性化症 / アンドロゲン受容体 / 核内受容体 |
Research Abstract |
〈目的〉我々は本邦例のアンドロゲン不応症を多数解析した結果、臨床症状、内分泌学的成績は完全型来丸性女性化症に完全に一致するにもかかわらず、アンドロゲン受容体遺伝子に異常を認めず、また、本症患者の陰部皮膚線維芽細胞のアンドロゲン受容体へのリガンド結合活性も正常である症例を見い出した。レポーター遺伝子を用いた本症例の培養皮膚線維芽細胞におけるアンドロゲン依存性の転写活性化能は全く検出できなかった。即ち、本症例は共役因子cofactor群の異常によるアンドロゲン不応症であることが強く示唆された。本研究では(1)本症例の解析によりcofactor病の疾患概念を確立する。(2)本症例で欠損しているcofactorをクローニングすることにより、アンドロゲン受容体に特異的なcofactorの構造と特性を解明する。 〈本年度の研究計画と成果〉正常の皮膚線維芽細胞および、アンドロゲン受容体遺伝子に変異を認めない睾丸性女性化症の皮膚線維芽細胞にアンドロゲン応答配列を上流に、また下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したMMTVプロモーターを導入、同時にアンドロゲン受容体(AR)またはグルココルチコイド受容体(GR)発現ベクターを導入し、各々のリガンド依存性転写活性を測定することにより、以下の結果を得た。核内受容体はN末側に恒常的転写促進部位(AF1)、C末側にリガンド誘導性転写促進部位(AF2)が存在する。GRとARのAFl、AF2ドメイン、各々のフラグメント、あるいは、GRとARのAF1、AF2ドメインを入れ替えたキメラ受容体を作成し、正常と本症例で転写活性化能を比較した結果、本症例ではARのAF1ドメインからの転写活性化シグナルの基本転写装置への伝達が途絶していることが判明した。このAF1からの転写活性化シグナル伝達障害は既知のAF2特異的共役因子(p300,TIF2,SRC-1)の強制発現では回復できなかった。以上の結果はARのAF1に特異的な未知の因子が本症例では欠損していることを強く示唆するもので、本年度の研究で上記〈目的〉の(1)をほぼ達成した。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Shoichi Natori: "Chromogranin B(secretogranin I), a neuroendocrine regulated secretory protein, is steroid to exocrine secretory granules in transgenic mice" EMBO J.17巻・12号. 3277-3289 (1998)
-
[Publications] 足立雅広: "AR遺伝子に異常を認めず転写共役因子病と推測された完全型睾丸性女性化症の1例" 日本内分泌学会雑誌. 74巻(1号). 70 (1998)
-
[Publications] 高柳涼一: "アンドロゲン受容体遺伝子" 小児内科. 3巻(8号). 1033-1037 (1998)
-
[Publications] 後藤公宣: "核内レセプターと遺伝性疾患" 実験医学. 16巻(19号). 2454-2458 (1998)
-
[Publications] 高柳涼一: "核内受容体nur77/NGFI-βファミリーの生理機能" 遺伝子医学. 2巻(4号). 621-623 (1998)
-
[Publications] Tomoko Shimoike: "Subcutaneous of visceral adipose tissue expression of the PPARγ gene is not altered in the fatty(fa/fa) zucker rat" Metabolism. 47巻(12号). 1494-1498 (1998)