1998 Fiscal Year Annual Research Report
血管吻合部狭窄予防を目的とした遺伝子治療の基礎研究
Project/Area Number |
10671101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大城 秀巳 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80272558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 温 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (40311625)
畠山 卓弥 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (60291324)
濱田 洋文 癌研究会化学療法センター分子生物治療研究部, 部長
宮田 哲郎 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (70190791)
重松 宏 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (40134556)
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Keywords | アデノウイルス / 遺伝子治療 / ラット頚動脈バルーン障害 / 内膜肥厚 / p21 / p27 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1、動脈硬化巣へのin vivoにおける遺伝子導入方法の確立、2、遺伝子治療のターゲットとして細胞周期調節蛋白の動脈硬化形成への関与の解明、の二点である。第一点において我々はアデノウイルスを用いた遺伝子導入を試みた。血管へのアデノウィルスによる遺伝子導入は動物モデルにおいて、すでにいくつかの研究が発表されているが、そのほとんどは正常血管壁に対する遺伝子導入実験である。しかし、治療が必要な実際の血管は高度に肥厚した内膜が存在するため、本研究では肥厚内膜への遺伝子導入を計画した。ラット頚動脈に予めバルーン障害を加え内膜肥厚を誘導しておき、そこにマーカーとしてベータガラクトシダーゼ遺伝子を組み込んだアデノウイルスを感染させ、遺伝子導入の効率を調べた。その結果、2x10^9pfu/mLのウィルス濃縮液を局所に使用したところ圧力をまったくかけることなくほぼ内膜全層への遺伝子導入が達成できた。これは内膜への遺伝子導入が正常血管の中膜へのそれと比べ導入効率が同等かそれ以上である可能性を示唆しているが、我々は内膜には中膜における内弾性板のようなバリアがないためではないかと考えている。第二のテーマではまず細胞周期インヒビターであるp21とp27を検討してみた。同じくラット頚動脈のバルーン障害モデルを用いた検討によるとp21は障害後4日目に軽度の発現上昇が認められるのみであった。これに対しp27は正常血管で発現されているものの、障害直後よりその発現は低下し、障害後7日目より再度上昇していた。この変化はまさに血管障害後の細胞分裂のタイムコースと同期しておりp27の細胞増殖における重要性を示唆させる所見といえる。現在、内膜の障害後のp27発現を経時的に検索すると同時に、その他の細胞周期調節因子の関与につい調査中である。
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