1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10671115
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
応儀 成二 鳥取大学, 医学部, 教授 (50168845)
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / マトリックスメタロプロテアーゼ / MMP |
Research Abstract |
腹部大動脈瘤(AAA)の病態において、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の過剰産生による動脈壁の破壊が重視されている。本研究では、MMPの特異的抑制物質であるtissue inhibitors of metalloproteinase(TIMP)を強制発現させてMMPを抑制し、AAAの進展を阻止する治療法の開発を目的としている。 本年度は、まず最初に組織培養で瘤壁のMMPの産生能とTIMPの産生能を評価した。AAA31例と非動脈瘤患者の剖検例7例より腎動脈下腹部大動脈の動脈壁を切除して、48時間組織培養したした培地を回収し、MMP-1,MMP-9,TIMP-1の濃度をELISA法で測定した。 その結果、MMP-1とMMP-9の産生能はAAA群で対照群より有意に亢進していた(P<0.01)。また、TIMPの遺伝子を導入する前の状態で、すでに瘤壁のTIMP-1の産生能は亢進していることが確認された。そこで、瘤壁でのMMP産生の抑制実験として、TIMP-1遺伝子導入に先立ち、薬理学的にMMPを抑制するとされるDoxycyclineの効果を検討した。その結果、Doxycycline非投与群に比し、Doxycycline投与群でMMP-9は容量依存性に抑制された。一方、TIMP-1の濃度はDoxycyclineに左右されず、DoxycyclineはTIMPを介さずに、MMPを抑制すると考えられた。しかしながら、AAA瘤壁でのMMPの産生能は、Doxycyclineにより抑制されても依然として非動脈瘤患者の動脈壁に比し、著しく亢進しており、これだけで瘤の進展を抑制するものとは考えがたい。以上の研究成果を踏まえ、現在さらにTIMP-1の発現を遺伝子導入により促進して、直接MMPを抑制する実験が進行中である。
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