1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10671115
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
応儀 成二 鳥取大学, 医学部, 教授 (50168845)
|
Keywords | 腹部大動脈瘤 / 遺伝子治療 / MMP / TIMP |
Research Abstract |
腹部大動脈瘤(AAA)の病態において、matrix metalloproteinase(MMP) の過剰産生による動脈壁の破壊が重視されている。本研究では、MMPの特異的抑制物質であるtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)を強制的に発現させてMMPを抑制し、AAAの発展を阻止する治療法の開発を目的としている。 本年度はラットの動脈瘤モデルを作成する予定であったが、準備段階において、「TIMP 遺伝子の導入だけで本当に動脈瘤の拡大が防げるのか?」という疑問が生じた。そこで本年度はAAAだけでなく、閉塞性動脈性疾患(AOD)も検討し、腹部大動脈の壁におけるMMPー2,9、TIMP-1をcompetitivePCR法によりmRNAレベルで検証した。 その結果、AAAではMMP-2とMMP-9のmRNAはAODや対照群に比べ有意に増加していなかったが、高値を認めた。AAAにおいてTIMP-1はAODに比べ低値であった。45mm以下のものを小径の動脈瘤、45mmより大きいものを大径の動脈瘤と定義すると、小径のAAAにおけるMMP-2の発現が、大径のAAAと対照群に比べ有意に増加していた(p<0.05)。AAAにおいて瘤径とMMP-2、MMP-9、TIMP-1 の発現とに相関はなかった。対照群においてMMP-9とTIMP-1に有意な相関を認めたが、AODとAAAに相関はなかった。したがってMMP-9とTIMP-1との不均衡が動脈瘤の形成に関与しているものと思われた。つまりTIMP-1が何らかの原因で増加しないことが、動脈瘤の形成に関与している可能性が示唆された。また動脈瘤形成の初期の段階において、MMP-2 が重要な役割を果たしているものと思われた。しかしながら動脈瘤がさらに成長する上で、MMP-2とMMP-9とは独立して作用している可能性が考えられた。
|