1999 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍随伴症候としての臓器不全に関する基礎研究-サイトカインの制御によるその予防と治療-
Project/Area Number |
10671125
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
箕田 誠司 熊本大学, 医学部・附属病院, 助手 (10212234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
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Keywords | サイトカイン / 臓器不全 / 担癌マウス / LPS / colon26 |
Research Abstract |
平成10年度の研究により、担癌マウスにおける癌からのIL-6などのサイトカイン産生は、そのためにLPSに対するショックの感受性を変化させ、マウスの生存に影響を与える可能性が明らかになった。平成11年度は、さらにLPSの投与量を増加させた実験を繰り返し、さらに詳細な解析を行なった。 マウス大腸癌細胞株colon26のIL-6高産生性株であるclone20および低産生性株であるclone5を各群5匹のBALB/Cマウス背部に1×10^6個を移植し、腫瘍を形成させた。接種後7日目にLD50量であるLPS115μg/bodyの腹腔内投与を行ない、各群の生存率を観察した。コントロールの非担癌マウスおよびclone5担癌マウスでは約50%の生存率であったのに対し、clone20担癌マウス群では、逆にこの急性死亡率が低下した。各群のLPS投与後48時間の血清中TNF-α、IL-1β、IL-6をELISA法を用いて測定した結果、clone20担癌マウス群でIL-6が低い傾向が認められた。重要臓器のICAM-1の免疫染色の結果、LPS投与群の非担癌マウスの肺においてのみ、ICAM-1の発現が認められた。同じ量のLPSを投与したclone5やclone20担癌マウスでは、有意なICAM-1の発現は認められなかった。 以上の結果より、IL-6高産生担癌マウスでは、正常マウスやIL-6低産生担癌マウスに比べ、癌由来のIL-6による高IL-6血症のために、逆に致死50%量のLPSに対する感受性が低下しており、その結果、LPSによる宿主由来のIL-6などの炎症性サイトカインの誘導が低下し、これらによって誘導されるICAM-1などの血管内皮上の接着分子発現が有効に起こらず、好中球が肺などへ集積しないために急性死亡率の低下をもたらしている可能性が示唆された。これらの結果は、癌患者の高炎症性サイトカイン血症状態が、必ずしも感染に対する臓器不全準備状態とはならないことを示している。
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