1998 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的アプローチによる潰瘍性大腸炎における発癌機序の解明
Project/Area Number |
10671160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 愼 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (00292946)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 圭二 東京大学, 医学部・附属病院, 助手
古川 洋一 東京大学, 医科学・研究所, 助手 (20272560)
正木 忠彦 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (30238894)
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / dysplasia / K-ras / APC / RER |
Research Abstract |
[背景]潰瘍性大腸炎(UC)は,大腸癌の危険因子である.特に,全大腸炎型や左側大腸炎型の長期経過例でリスクが高い.また,大腸癌の家族歴を持つ患者は癌発生の頻度が高い事が示されている.また,通常の大腸癌に較べ,4型癌,低分化腺癌の頻度が高いことからも,発癌過程に違いがある可能性が考えられる. [対象と方法]当施設において,dysplasiaまたは癌に対して大腸切除が行われたUC患者15例(M:8,F:7)を対象とした.23病変(dysplasia:12.癌:11)を検討した.ホルマリン固定されたパラフィン切片から,腫瘍部分だけを顕微鏡下に切り出してDNAを抽出した.K-ras遺伝子変異の検索は,変異の約80%が集中すると言われるcodon 12のpoint mutationを2 step PCR-RFLP法を用いて検討した.APCは癌抑制遺伝子であり,変異を伴う腫瘍では多くの場合loss of heterozygosity(LOH)を伴うことから,LOHの有無を検討した.MSIは9種類のマーカー検討し,3箇所以上でreplication error(RER)が認められた場合に陽性とした. [結果]K-ras codon 12は,dysplasiaで0/12(0%),癌で2/11(18%)の頻度で変異を認め,通常の大腸癌に比較して低い頻度であった.APC LOHは,検討可能であった5例,8病変のうち,全病変で陰性であり,通常の大腸癌に比較して低い頻度であった.MSIは,dysplasiaで3/12(25%),癌で2/11(18%)の頻度で陽性であり,通常の大腸癌と同程度の頻度であった. [結語]UC関連大腸癌の発生過程においては,APC,K-rasの関与は低いと考えられ,通常の大腸癌とは異なる経路である可能性が示唆された.MSIは同等であり,通常の大腸癌と同じく,様々な遺伝子変異を促進する因子として同様に関与していることが示唆された.
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