1998 Fiscal Year Annual Research Report
再灌流血中エンドトキシンの温阻血肝に及ぼす影響とKupffer細胞機能抑制の意義
Project/Area Number |
10671169
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 昌八 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20196827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 達 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00090027)
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Keywords | 肝虚血 / 再灌流障害 / エンドトキシン / Kupffer細胞 |
Research Abstract |
温阻血肝の移植graftへの利用の可能性を探るため、再灌流門脈血中のエンドトキシンの影響をみた報告はない。この研究では正常肝と予めGdCl_3投与によりKupffer細胞機能を抑制した肝を用いて比較検討した。 【方法】Kupffer細胞機能を抑制するため、GdCl_3(7mg/kg)を肝虚血前2日間投与したG群と生食水を投与したN群に門脈-静脈間シャントを作成後に60分の全肝虚血を行った。さらに両群につき再潅流時に正常ラットにとってsublethalな量(1mg/kg)のエンドトキシンを門脈内投与する群(NE群、GE群)を作成した。再灌流1、3、6時間目に血漿GOT及びTNF-α値、貧食指数(PI)の測定及び組織学的検討を行うとともに、7日間生存率を観察した。 【結果】(1)正常肝の肝虚血前のPIは0.013±0.003であり、これはGdCl_3投与により0.007±0.001まで有意に低下した。(2)N群の血漿TNF-α値は再潅流1時間目に79.4±28.2pg/mlに達したが、6時間目には正常値まで低下した。一方、G群では再灌流1時間目においても14.1±7.3pg/mlと有意に抑制された。(3)血漿GOT値はN群、G群の両群とも虚血時間の長さに依存して上昇した。再灌流時にエンドトキシンが流入したNE群では再灌流6時間目には6,106±1,589IU/Lに達したが、GdCl_3を前投与したGE群ではその上昇が抑制された。(4)N群、G群とも再灌流後の7日間生存率は100%と良好であったが、NE群では38%に低下し、組織学的には肝組織中にfocal necrosisが散在し、好中球の集積も著明であった。GE群では肝組織中の好中球の集積は減少し、肝組織壊死の程度も軽減していた。 【結論】正常肝は60分の全肝虚血に耐えうるが、再灌流血中にエンドトキシンが加わるとKupffer細胞が活性化され、TNF-α産生の増加および肝組織中への好中球の浸潤を引き起こし、生存率は低下した。このような状況下でのKupffer細胞機能の一時的な抑制は、肝虚血・再灌流障害を軽減しうる可能性が示唆された。
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