1998 Fiscal Year Annual Research Report
胃酸分泌抑制剤による耐糖能改善機序に関する基礎的研究
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10671189
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
角 昭一郎 島根医科大学, 医学部, 講師 (80252906)
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Keywords | 膵切除 / 耐糖能 / ガストリン / プロトンポンプ阻害剤 / ガストリン / CCK-B受容体拮抗剤 / 膵再生 / 胃 / ラット |
Research Abstract |
膵切除後の耐糖能などとプロトンポンプ阻害剤(PPI)による内因性高ガストリン血症およびgastrin/CCK-B受容体拮抗剤(GRI)の関連を検討する目的で、ラット90%膵切除モデルを以下の4群に分け、2週間にわたり各薬剤を連日胃内投与した。1群(n=7):溶媒(0.5%メチルセルロース、1%重炭酸ナトリウム含有水)のみ投与、2群(n=8):PPI(lansoprazol、30mg/kg体重/日)投与、3群(n=6):GRI(AR-041R、30mg/kg体重/日)投与、4群(n=6):PPIとGRI投与(投与量は2・3群と同じ)。これに正常ラット(5群、n=10)を加えた計5群で以下の結果を得た。数値は平均±SE。p<0.05を有意とした。 膵切14日目の血清ガストリン値(pg/ml)は1群:161±13、2群:324±36、3群:194±54、4群:420±56、5群:111±6で、PPIによる高ガストリン血症を認め、GRIもガストリンを上昇させる傾向を認めた。また、各群の残膵(5群では残膵相当分、mg/g体重)は、1群:0.60±0.05、2群:0.64±0.05、3群:0.71±0.06、4群:0.68±0.04、5群:0.26±0.02で、良好な膵再生を認めたが、薬剤による差はなかった。一方、胃重量(mg/g体重)は1群:3.9±0.1、2群=4.2±0.1、3群:3.7±0.2、4群:3.6±0.2、5群:2.6±0.1と、膵切群で増加し、膵切群間ではGRIにより有意に減少した。しかし、膵切後第3、6、10、13日目の飽食時血糖や体重変動、あるいは第14日目に施行した経胃ブドウ糖負荷試験(ブドウ糖2g/kg体重、胃内投与)の血糖変動においても、膵切群間の薬剤投与による有意差は得られなかった。ただし、最もガストリンが高値だった4群は経胃ブドウ糖負荷試験の血糖上昇が若干緩和される傾向を認めた。 以上より、今回の実験モデルは妥当とみられるが、当初予想した耐糖能に対する影響は明らかでなかった。今後は、インスリン分泌能や組織学的な検討を行う予定である。
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