Research Abstract |
遺伝標識付細菌を用いたバクテリアルトランスローケイション(BT)研究法の開発のため,ラットを用い,総胆管の結紮・切離を行った閉塞性黄痕(I)群と総胆管剥離のみを行った(C)群との間で光顕的には腸管粘膜構造の両群間差異は明確でなかった.しかし,フェノールフタレイン(PSP)腸管内投与後の尿中排泄率の検討では,1,2週後ともにI群で有意なPSP排泄率の増加がみられ,I群での腸管粘膜透過性亢進が明らかとなった.遺伝標識として正常のWistarラットの盲腸から分離,同定した大腸菌に3剤の抗生物質質(bacitracin,neomycin,streptomycin)耐性を獲得させた遺伝標識付大腸菌株JNW14を作りだした,この大腸菌株JNW14の一夜培養液を飲料水として摂取させ腸管内細菌とし,て定着させ,C群、I群,閉塞性黄痘+肝切除(IH)群に分け,盲腸内容,腸間膜リンパ節(MLN),肝臓,肺,脾臓,門脈血を採取しJNW14の生菌数を測定した.その結果,MLN培養は全群陽性で,生菌数はI群,IH(6,24時間)群でC群と比較して有意に増加した.各臓器の培養陽性頻度は,IH群の12時間後の肺(71%),48時間後の肝臓,牌臓(50%)でC群と比較し,有意な増加がみられた(p<0.05).また,肺培養陰性群に比較して陽性群でのMLNの内生菌数は有意に高値であった(p<0.05).さらに門脈血中エンドトキシン濃度は各群とも極めて低値で,各群間で差異を認めず,JNW14は生菌として検出されなかった.今回開発した遺伝標識付細菌(JNW14)によりBTの病態が明確になり,肝障害時のMLNから肺への移行にはリンパ行性経路の関与が大きいことが判明した.また,BTの研究に遺伝標識付細菌を用いる手法の確立は,BT機構の解明と予防策の研究に有用と考えられた.
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