2000 Fiscal Year Annual Research Report
消化器癌における化学療法剤感受性とその機序に関する研究
Project/Area Number |
10671225
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
船曳 孝彦 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (40084537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神保 康子 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手 (50308871)
桜井 洋一 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教授 (60170651)
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Keywords | 化学療法剤感受性 / 消化器癌 / thymidylate synthare / DPD / P-glycoprotein / thymidine phosphorylase / p53蛋白 / p53遺伝子 |
Research Abstract |
胃癌、大腸癌症例を対象にCollagen droplet drug sensitivity test(CD-DST)法を用いて5-fluorouracil(5-FU),mitomycin(MMC),cisplatin(CDDP)に対する化学療法剤感受性試験を施行し、感受性を制御する因子として癌組織中のthymidylate synthase(TS活性),dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD活性),thymidine phosphorylase(ThdPase値ならびに免疫染色),P-glycoprotein(P-GP)発現,p53蛋白の発現、p53遺伝子変異について関連性を検索し、化学療法剤感受性予測因子としての臨床的意義を検討した。対象は胃癌17例、大腸癌23例の外科的切除症例40例であり、症例の内訳は男性19例、女性21例で、平均年齢71.0±11.2歳であった。各切除組織を採取後collagen gel内で培養した後、5-FU,MMC,CDDPを一定時間in vitroにて培養液に混入し曝露した。これらの薬剤に対する感受性はコントロールウェルの細胞数に対する各薬剤曝露後ウェルの細胞数であるT/C比(%)として算出し評価した。各薬剤感受性と各種酵素活性との関連を検討する目的で、癌組織中のTS活性、DPD活性、ThdPase値の平均値以上を高値群、平均値未満を低値群の2群に分け、両群間のT/C比を比較した。またThdPase、P-GPおよびp53蛋白の免疫組織学的染色を施行し、それぞれの発現陰性群、陽性群の2群に分け、T/C比を比較した。p53遺伝子のexon5,exon6,exon7,exon8における変異はPCR-SSCP法を用い、いずれかのexonに異常バンドを検出したものをp53遺伝子変異陽性と判定しT/C比を比較した。5-FU、MMC、CDDP曝露後の平均T/C比はそれぞれ胃癌で79.5±19.6%、81.2±26.5%、81.4±25.9%、大腸癌で86.7±10.8%、101.6±7.2%、102.1±12.3%であった.5-FUに対する感受性はTS活性高値群において低い傾向を示した(p=0.087)が、DPD活性値との間に有意な関連は認めなかった。ThdPase定量では高値群において5-FUに対する感受性が低い傾向を認めたが(p=0.086)、免疫組織学的染色の結果、ThdPaseの発現性と5-FU感受性との間には有意な関連は認めなかった。またP-GP染色性と薬剤感受性T/C比とは有意な関連は認めなかった。p53蛋白発現陽性群において5-FUの感受性が有意に低く(p<0.05)、同様にp53遺伝子変異陽性群においても5-FUの感受性が有意に低かった(p<0.05)。さらにp53蛋白陽性かつp53遺伝子変異陽性群はそれ以外の群と比較し有意に感受性が低く(p<0.02)、以上よりMMC、CDDPに対する感受性は今回検討した各因子とは有意な関連は認めなかったが、5-FUに対する感受性はp53蛋白陰性かつp53遺伝子変異陰性の症例が高感受性を示し、これらが5-FU感受性の予測因子となりうると考えられた。
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