脊髄損傷モデルにおける神経回路再構築の制御機構に関する研究

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10671280
• Research Institution: Akita University
• Principal Investigator: 伊藤 康信 秋田大学, 医学部, 助教授 (00184698)
• Keywords: HRP / NGF / CGRP / シナプス / GDNF / 脊髄移植 / 電顕 / フィブリン糊

Research Abstract

神経栄養因子含有fibrin glue(FG)の脊髄内移植モデルにおいて再生後根神経と宿主脊髄のシナプス機構を評価することを目的に本研究が行われた。
(1) glial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)およびnerve growth factor(NGF)含有FGの成熟ラット脊髄内移植モデルの作成とcalcitonin gene-related peptide(CGRP)免疫染色
後根神経の特異的マーカーであるCGRP免疫染色を行って、宿主脊髄への再生を検討した。移植1ヶ月後、CGRPで標識された再生後根神経は後根-脊髄境界部を貫通し、宿主脊髄に旺盛に再生した。一部の再生線維は宿主脊髄内のmotoneuron群内に伸展した。再生の程度を定量的に解析すると、GDNF及びNGF含有FG移植ラットはcontrol(生食含有FGの移植ラット)より有意に優っていた。
(2) 後根神経のinjury filling標識
宿主脊髄への後根神経再生の直接的証明のために、HRPによる順行性標識を行った。移植3ヶ月後、GDNF含有FG移植ラットの後根神経を遠位部で切断し、断端をHRPで標識した。48時間後に灌流固定し、矢状断切片をDAB処理して再生後根神経を光顕・電顕的に解析した。HRP標識後根神経はCGRP標識線維と同様な再生様式を示した。電顕上、再生後根神経軸索は宿主脊髄内のdendritic profileとシナプス結合するのが多数観察された。再生軸索の中にはmyelin sheathを有するものも同定された。
以上の結果から、FGから徐放性に放出されたGDNF及びNGFは後根神経の宿主脊髄への再生と宿主脊髄内神経細胞とのシナプス形成を支持・促進した。したがって、GDNFおよびNGFは損傷脊髄反射弓の再構築に貢献することが推定される。

Research Products

• [Publications] Kohki Iwaya: "Neurotrophic agents in fibrin glue mediate adult dorsal root regeneration into spinal cord." Neurosurgery. 44・3. 589-596 (1999)
• [Publications] 太田徹: "損傷宿主皮質脊髄路線維の移植胎仔脊髄組織内への再生" 神経組織の成長・再生・移植研究会第13回学術集会論文集. 10・1. 67-68 (1998)