1999 Fiscal Year Annual Research Report
脳腫瘍の治療計画の新しい評価法-MRSによる悪性度の診断(基礎と臨床研究)-
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10671294
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Research Institution | SHIGA UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCE |
Principal Investigator |
椎野 顯彦 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (50215935)
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Keywords | 核磁気共鳴 / スペクトロスコピー / 脳腫瘍 / クレアチン / コリン / 壊死 / 悪性度 |
Research Abstract |
髄膜腫は頭蓋内腫瘍のなかでも頻度の高い良性腫瘍であるが、手術適応や手術計画を決める上で増殖能を調べることは重要である。術前に高い悪性度が予測された場合には、手術計画や手術操作には悪性腫瘍に準じた配慮が必要で、手術中の摘出境界部の生検は入念に行う必要がある。また一方で、増殖能が低ければ、脳の保護を優先し部分摘出にとどめた方が術後の臨床経過は良好である。MIB-1の陽性率はほぼ腫瘍のgrowth fractionに等しいと考えられている。MRSで測定したCho/Cr比は、MIB-1 SIと統計学的に有意な相関を示したことから、MRSは、侵襲なく腫瘍の増殖能を推測することが可能な検査と思われる。MRSで検出されるCho群の濃度は、膜の生合成の増加、cellularityの増加に相関すると言われている。われわれの研究で、MIB-1 SIとCho/Cr比が相関した理由は、こうした膜の生合成の増加やcellularityの増加が原因と推測される。MRSで検出されるmobile lipidの由来が壊死巣と深くかかわっているとの報告がある。我々の症例で、mobile lipidが検出された髄膜腫のすべてに病理学的に壊死が認められたこと、塞栓術後に乳酸に引き続いてmobile lipidの信号が出現し、摘出標本で壊死巣を確認できたことは、mobile lipidの由来が壊死巣であることを示唆している。壊死巣の存在は、悪性度の一つの指標であるので、画像では判り難い壊死巣がMRSで検出可能であることは重要である。髄膜腫が不均一に造影されても、これが必ずしも壊死によるとは限らないので、壊死の存在を画像のみで診断するには限界がある。乳酸の存在は壊死に至る前段階と考えられるが、乳酸が検出された5つの髄膜腫のうち2つは病理学的にはbenignであった。このことから、必ずしも乳酸の存在はnon-benignを示唆しない。しかしながら、benignで乳酸が検出された2つの髄膜腫のMIB-1 SIは、2.95と2.30でいずれもbenign群の平均値よりも高い値であり、乳酸の存在は腫瘍の増殖率が高いことを示唆するものと考えられる。MRS上、mobile lipidと乳酸の信号は鑑別可能であるが、両者が混在している場合には完全に分離することは困難である。以上、MRSによりCho/Cr比求めることは、髄膜腫の悪性度の補助診断に有用であった。また、乳酸やmobile lipidの検出は増殖能の高さを示唆する所見であった。
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Research Products
(1 results)