1999 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制遺伝子p16導入による膠芽腫の遺伝子治療に関する研究
Project/Area Number |
10671318
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
原 充弘 杏林大学, 医学部, 教授 (30086607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 明男 杏林大学, 医学部, 助手s (30311971)
伊藤 宣行 杏林大学, 医学部, 助手 (70311959)
斉藤 勇 杏林大学, 医学部, 教授 (20186927)
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Keywords | p16 / 遺伝子治療 / 膠芽腫 / 癌抑制遺伝子 / Cyclin D1 / 酪酸ナトリウム |
Research Abstract |
(1)癌抑制遺伝子p16を欠損したヒト悪性脳腫瘍株細胞U87MGに、外来性にp16遺伝子を発現させると細胞増殖は抑制され、細胞周期のG0-G1期に停止することが明らかになった。さらにテロメラーゼの活性低下が観察された。(2)ヒト悪性脳腫瘍株細胞U87MGへのp16遺伝子の発現により細胞形質の変化が観察された。特に、細胞の平坦化、アクチンストレスファイバーの増加、様々な細胞外基質蛋白に対する接着が増加した。このことは、悪性化に伴うp16の欠失と腫瘍組織の悪性化変化との間を関連づけると考えられた。(3)ヒト悪性脳腫瘍株細胞U87MGへのp16遺伝子を発現させると、細胞外からの情報を細胞内に伝える分子Racの減少、その下流にあるMAPカイネースの燐酸化低下、c-fos蛋白質の発現低下が観察された。このことは、逆に、腫瘍の悪性化に伴うp16遺伝子の欠失により、細胞外からの増殖刺激に腫瘍細胞が容易に反応出来るようになることが示唆すると考えられる。(4)酪酸ナトリウムは、ヒト悪性脳腫瘍細胞の増殖、浸潤を抑制することが明らかになった。その一因として、酪酸ナトリウムが、癌抑制遺伝子p21の発現を増加させ、G1期に細胞周期を停止させることを明らかにした。上記の癌抑制遺伝子p16の外来性導入による遺伝子治療との併用により、細胞増殖抑制が行える可能性が示唆された。(5)Cyclin D1の二つのalternative splicing form(a),(b)発現によって細胞増殖相の大きさを逆方向に調節できることを明らかにした。つまり、form(a)を高発現させると細胞増殖相の大きさは大きくなり、逆にform(b)の高発現により増殖する細胞の割合は小さく成ってくることを示した。(6)悪性脳腫瘍の腫瘍浸潤部ないしは周辺部では、Cyclin D1 form(a)の発現が増加しているという報告がある。このようなCyclin D1の発現と細胞浸潤との関係を明らかにするために、Cyclin D1 form(a)高発現細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼ活性を測定した。その結果、マトリックスメタロプロテイナーゼ活性(MMP-2,MMP-3,MMP-9)が、Cyclin D1 form(a)高発現細胞で高くなることが明らかになった。つまり、Cyclin D1の発現によって、何らかの細胞内シグナルを介して、マトリックスメタロプロテイナーゼ活性が増加し、そのプロテイナーゼは周辺部正常脳組織を分解し、腫瘍細胞の浸潤を促進するという可能性が示唆された。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] M.Ohkoudo: "Expression of p53,MDM2,Ki-67antigen in recurrent meningiomas."J.Neuro-oncology. 38. 41-49 (1998)
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[Publications] H.Sawa: "Alternative spliced forms of cyclin D1 modutate cell cyde in an inrerse manner."Onwgene. 16. 1701-1712 (1998)
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[Publications] T.Ijima: "Spreading depression indeces deltion of MAP2 in area CA3 of the hippocampus in a rat unilateralartery occuluiton model."J.Neurotraama. 15. 277-284 (1998)
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[Publications] M.Hara: "Delayed eyst formation after,radiosargery radiosurgery for cerebrel arteriovenous malformaton,Two case reports."Minim.Invas.Neurosurg. 41. 40-45 (1998)
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[Publications] S.Shiokawa: "Functional role of focal adhesion kirase in the prosess of implantotion."Mol.Hum.Reproduction. 4. 907-914 (1998)
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[Publications] H.Sawa: "Exogenous expression of p16 INK4a is associated with decrense in telomerase activity."J.Nearo-ancology. 42. 45-57 (1999)
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[Publications] S.Shiokawa: "Functional role of Arg-Gly-ASP(RGD)-bindingsite on betal integrins in embrycimplantation using mouse hlastocytes and human deadva."Biology of reproduction. 60. 1468-1474 (1999)
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[Publications] T.Arato-Ooshima: "Overexpression of cyclin D1 induces glioma invasion by increasiug MMP activity and cell motility."Int.J.Cancer. 83. 387-392 (1999)
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[Publications] 野口 明男: "P16遺伝子導入による膠芽腫細胞の形質変化"杏林医学会雑誌. 30. 471-484 (1999)
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[Publications] 伊藤 宣行: "ヒトグリオーマ細胞に対する酪酸ナトリウムの細胞増殖および浸潤能抑制効果について"杏林医学会雑誌. 30. 485-496 (1999)