1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10671345
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
村上 正純 千葉大学, 医学部, 助手 (50219903)
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Keywords | 脊髄損傷 / 脳由来神経栄養因子(BDNF) / 神経栄養因子 / TrkB / NT-3 |
Research Abstract |
脊髄損傷に対する新しい治療薬としての神経栄養因子、特に脳由来神経栄養因子(BDNF)の効果を検討する目的で、ラット脊髄圧迫損傷モデルを用いた実験的研究を行った。脊髄損傷モデルの作製には、雄性Wistarラットを用い、第8胸椎椎弓切除後、硬膜管背側より直径3.2mmの圧迫子を介して30〜50g、5分間の圧迫を加え胸髄不全損傷とした。1.損傷時における内因性BDNFの発現に関し定量的PCR法にて検討し、さらにIn situ hybridization(ISH)法を用いたBDNFmRNAおよびBDNFのreceptorであるTrkBmRNAの発現を検討した。その結果、BDNFは損傷後6時間以内に増加し始め、3日以降には低下していた。これに対して、TrkBはligandと異なり損傷直後には低下傾向を示していたが、1週以降に増加していた。2損傷後の.BDNFクモ膜下腔持続投与によるSuperoxide dismutase(SOD)mRNAおよびMyelin basic protein(MBP)mRNAの変化をNothem blot analysis、ISH法にて検討し、併せて損傷動物の行動学的評価も行った。その結果、損傷後にBDNFの2週間持続投与を行うと、SODは一時的な増加が認められ、MBPは投与終了後にも持続的に増加していた。またSODは神経細胞のほかoligodendrocyteでも発現を認めた。さらに行動学的にも、BDNF投与群においては明らかに機能回復が促進されていた。以上の実験結果より、BDNFは損傷脊髄に対し急性期には保護的に作用し、その後は修復に作用すると考えられた。したがって、BDNFは脊髄損傷の新しい治療薬として、大いに期待できると思われる。今後はBDNFの至適投与方法を検討するとともに、同じ神経栄養因子ファミリーの一つであるNeurotrophin-3(NT3)についても同様の手法で検討する予定である。
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