1999 Fiscal Year Annual Research Report
c-fos遺伝子からみた慢性関節リウマチの骨・軟骨破壊機構の解明と治療法に関する検討
Project/Area Number |
10671387
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Research Institution | JIKEI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
辻 美智子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80207365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向 千恵美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (00307472)
田中 真希 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (00266701)
藤井 克之 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10112856)
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Keywords | Activating protein-1 / 慢性関節リウマチ / c-fos遺伝子 / コラーゲン関節炎 |
Research Abstract |
カニクイザルにCIAを作製し、血清中の抗II型コラーゲン抗体を測定した結果、感作2週目頃よりIgM型、これに次いで4週頃よりIgG型コラーゲン抗体が産生され、RA患者と同様に関節炎の初期より同抗体が上昇することが観察された。関節の病理組織像では、滑膜にフィブリノイド壊死を伴った広範な肉芽性炎症が認められ、多数の炎症性細胞浸潤を伴うパンヌス様組織による関節軟骨の破壊が観察された。軟骨基質および軟骨細胞にはその主たる分解酵素であるMMP-1,MMP-3、ならびにこれらの酵素の誘導に強く関与すると考えられるサイトカインであるIL-1α,TNF-αによる染色が観察された。また、これらの組織におけるc-fosの発現についてin situ hybridization法を用いて検討した結果、サルCIAの関節炎の発症においても、軟骨細胞にはc-fosが発現することがわかった。 Lewis系メスラットのCIAに、2本鎖AP-1DNAオリゴヌクレオチド(AP-1 oligo)および、対照として、等量の生理食塩水あるいはAP-1部位のみランダムな同一長の2本鎖DNAオリゴヌクレオチド(control oligo)を、感作1週目より週2回5週間連続で腹腔内に投与した。経時的に、paw voumeならびに血清中の抗II型コラーゲン抗体価についてELISA法を用いて測定するとともに、脛骨骨髄内の酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)陽性細胞数の変化および膝・足・手関節について、組織学的に観察した。結果、AP-1オリゴ投与群では関節炎の発症が抑制され、抗II型コラーゲン抗体産生においては、IgG型の抗ウシII型コラーゲン抗体価には明らかな変化は認めないものの、抗ラット抗II型コラーゲン抗体価は対照群に比べ低値を示した。さらに対照群のラットの膝・足・手関節には、滑膜の増生とパンヌフ様組織による著しい関節破壊像が観察されたの対してAP-1オリゴ投与群では、滑膜に細胞浸潤を伴った軽度の炎症所見を認めるものの、関節軟骨ならびに軟骨下骨の破壊はわずかで関節の構築が保たれていた。さらにAP-1オリゴ投与群では、脛骨骨髄内のTRAP陽性細胞の増加ならびにTRAP活性が抑制されていた。 以上の結果から、AP-1ヌクレオチドによるc-fos遺伝子の作用部位での競合的阻害はTRAP陽性細胞の軟骨下骨髄への集族、抗II型コラーゲン抗体産生の抑制などのメカニズムを介してRAにおける骨・軟骨破壊を抑制する可能性があることが示唆された。
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