1998 Fiscal Year Annual Research Report
子宮頚癌患者における抗ヒトパピローマウィルス(HPV)免疫回避機構
Project/Area Number |
10671526
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
笹川 寿之 金沢大学, 医学部, 助教授 (30272975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正樹 金沢大学, 医学部, 教授 (10127186)
瀬川 智也 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (40301197)
小池 浩司 金沢大学, 医学部, 助教授 (70225340)
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Keywords | HPV / 癌抑制遺伝子 / 免疫 / HPV DNA診断 |
Research Abstract |
FHIT遺伝子は、多くの癌組織においてLOHや異常転写発現が頻発する癌抑制遺伝子であることが知られている。悪性型HPV感染とFHIT遺伝子の発現を検討したところ、ほとんどの子宮頚癌組織中にHPV-DNAは検出されたが、癌遺伝子であるE6-E7遺伝子の転写がみられない症例が存在した。E6-E7遺伝子の発現を認めない癌組織では高率にFHITの異常転写発現がみられた。一方、E6-E7遺伝子の発現が認められる症例ではFHITの異常transcriptionはほとんどみられなかった。これら異常転写発現を呈した症例では、fhit蛋白の発現がみられなかったことより、子宮頚部の癌化にはFHIT遺伝子の機能喪失が重要である可能性が示唆された。頚部の癌化の誘導には悪性型HPV感染とその遺伝子発現が重要であるが、癌化形質を獲得したのちにはFHIT遺伝子の機能喪失が二次的に誘導される可能性が示唆された。またその際には、免疫学的ターゲットとなりうるE6-E7遺伝子の発現が抑制された癌細胞のみが選択的に増殖した可能性も示唆される。(論文)。 すべての粘膜型HPVタイプの感染と子宮頚癌発生との関連を明らかにするために我々独自のHPV-DNA診断法を開発した(LCR-E7 PCR法)。この方法を用いると30タイプ以上の粘膜型HPVを検出可能である。子宮頚癌ではHPV16,18,31,33,35,51,58型などが単独感染として検出されたが、低悪性度病変ではHPV30,42,53,56,66型など新たなタイプの単独感染や、異なるタイプの混合感染が多数みられた。前者に代表される悪性型HPVタイプは選択的に持続感染し癌化を誘導するが、後者のHPVタイプは低悪性度病変を誘導する可能性はあるが癌化を誘導しないと考えられた。(国際ヒトパピローマウイルス学会、チャールストン、米国 1月、1999にて発表、論文準備中)。今後はHPVタイプの違いによる免疫応答の違いや感染様式の違いについて検討する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 野田透、笹川寿之ら: "Detection of human papillomavirus (HPV) DNA in archival specimens of benign prostatic hyperplasia and prostatic cancer using a highly sensitive-nested PCR method" Urological Res.26巻. 165-169 (1998)
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[Publications] 笹川寿之、山崎洋ら: "Immunogloburins A and G responses against virus-like particles (VLP) of human papillomavirus type 16 in women with cervical cancer and cervical intraepithelial lesions." Int.J.Cancer. 75巻. 529-535 (1998)
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[Publications] 董玉貞、笹川寿之ら: "Human papilomavirus, C.Trachomatis infection and other risk factors associated with cervical cancer in China" Int.J.Clinical Oncol.3巻. 81-87 (1998)
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[Publications] 笹川寿之、井上正樹: "HPVワクチンによる予防と治療-HPVに対する免疫応答とワクチンの技術開発実用化,経済性をめぐって" 産婦人科の世界. 50巻. 487-500 (1998)
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[Publications] 瀬川智也、笹川寿之ら: "FHIT Abnormalities and HPV E6/E7 mRNA Expression in the Development of Cervical Cancer" Cancer. (近日出版). (1999)
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[Publications] 笹川寿之、瀬川智也、井上正樹: "パピローマウイルスの診断法" 臨床検査. (近日出版). (1999)